【大学受験】障害学生への配慮実態調査、試験時間「一般学生と同じ」が増加

 全国障害学生支援センターは2025年11月27日、「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査2024」の結果から、受験時の配慮の詳細について分析結果を発表した。試験時間や解答方法など、大学受験時の合理的配慮の実態や懸念点をまとめている。

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試験時間の配慮
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 全国障害学生支援センターは2025年11月27日、「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査2024」の結果から、受験時の配慮の詳細について分析結果を発表した。試験時間や解答方法など、大学受験時の合理的配慮の実態や懸念点をまとめている。

 「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査2024」では、調査対象821校(大学811校・大学校10校)に対し、381校が回答し、回答率は46%だった。今回は、調査結果から、受験時の配慮の詳細について分析して公表した。

 試験時間の配慮についは、「1.3倍」「1.5倍」の延長はどの障害種別でもある程度の大学が実施している。ただし、前回比でみると「1.5倍」は聴覚障害・精神障害・知的障害でそれぞれ2ポイント減っており、全体として減少傾向にある。重複障害の学生など、十分な解答時間が確保できないことが懸念されるという。

 一方、「一般学生と同じ(時間延長なし)」とする大学がすべての障害種別で増加。特に精神障害で132校(+4ポイント)、知的障害で110校(+5ポイント)と激増しており、全国障害学生支援センターは「この傾向は注意が必要」と分析している。

 解答方法の配慮では、多くの障害で「拡大文字」が主流となっているが、それ以外の方法は実施校が少なく、前回比でも大きな変化はない。「一般学生と同じ」のみを選択し他の配慮を行わない大学が依然として多く、受験機会を制限する要因になっているという。

 視覚障害のある学生が、自分にあった受験方法を選べるようにするためには、機器の活用や人的支援などの配慮が広がることが期待される。しかし現状では、「一般学生と同じ(配慮なし)」とする大学が、解答方法で72校あり、前回比で2ポイント増えている。視覚障害の特性上、解答方法に配慮がない場合、その大学を受験できないことに直結する。全国障害学生支援センターは「これは非常に重大な問題であり、改善が強く望まれる」と指摘している。

 肢体障害のある学生が、自分の力を十分に発揮するためには、パソコンや意思伝達装置などの機器の使用、代筆や口述といった補助者の同席などが必要だ。そのため、学生が自分にあった解答方法を選べるよう、多様な合理的配慮が、より多くの大学で可能になることが望まれる。知的障害学生の受験者は年を追うごとに増加しており、受験時の配慮の広がりが望まれるという。

 聴覚障害のある学生への面接試験での合理的配慮として、もっとも多いのは「筆談による面接」で117校にのぼり、主流として定着していることがうかがえる。ただし、前回比ではわずかに減少している。「手話通訳者」や「パソコン通訳者」の同席を実施する大学も一定数あるが、どちらも「筆談」の半数以下にとどまっている。さらに、「一般学生と同じ」のみを選択し他の配慮を行わない大学が129校あり、前回比で2ポイント増えている。全国障害学生支援センターは「面接試験では円滑なコミュニケーションが基本であり、そのための支援は大学が主体的に提供すべき」と指摘する。

 精神障害のある学生への面接試験での合理的配慮として、「質問内容を文字で確認」「質問を理解しやすいよう工夫」「個別面接の実施」「筆談で面接」などが一定数の大学で行われている。しかし、「一般学生と同じ(他の配慮なし)」とする大学が118校にのぼっており、精神障害のある学生への支援の拡充は急務だという。

 同調査の大学ごとの回答の詳細は「大学案内2026障害者版」に掲載している。さらに大学案内障害者版Web情報サービスではデータの検索をすることができる。

 毎年の調査結果については、同センター機関誌「情報誌・障害をもつ人々の現在」にて公表している。今後の予定として、10月および12月に発行の機関誌にて授業での配慮等の調査分析を掲載する予定だ。また、2025年度より機関誌がオンラインにて誰でも読めるようになった。

《吹野准》

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