東大・ハーバードに届く子の共通点…渋渋・西大和学園校長が語る「非認知スキル」が伸びる環境とは

 東大学校推薦型選抜で全国最多の合格者を輩出し、ハーバードやイエールなど海外トップ大への進学実績ももつ渋谷教育学園渋谷と、東大・京大・医学部医学科に多数の合格者を送り出す西大和学園。両校の校長が語る、非認知スキルと学力の関係、そして「伸びる子」の特徴とは。

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渋渋・西大和学園校長が語る「非認知スキル」が伸びる環境とは
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 灘中学校合格実績日本一を誇る浜学園は、大手中学受験塾として全国初の非認知スキル教育プログラムを展開している。学園長の松本茂氏は、「全国屈指の進学校こそ、非認知スキルの育成が教育の柱となっている」と語る。

 東大学校推薦型選抜で全国最多の合格者を輩出し、ハーバードやイエールなど海外トップ大への進学実績ももつ渋谷教育学園渋谷と、東大・京大・医学部医学科に多数の合格者を送り出す西大和学園。両校の校長が、非認知スキルと学力の関係、そして「伸びる子」の特徴を語った。

【ゲスト】
岡田 清弘氏:西大和学園中学校・高等学校 校長
高際 伊都子氏:渋谷教育学園渋谷中学高等学校 校長
【ファシリテータ】
松本 茂氏:浜学園 学園長


認知スキルと非認知スキルは子供の成長に必要な"両輪"

松本学園長:浜学園は、2024年度より大手中学受験塾として全国で初めて非認知スキル教育プログラム「WEBSTAR」を導入し、塾生全員に無料で提供しています。非認知スキルが学力を伸ばすのに役立つことは学術的に明らかになっており、非認知スキルのトレーニングにより言語能力である国語力が底上げされると、各教科の理解度を大きく伸ばすことが期待されています。さらに、将来的な所得や社会的適応力にも良好な結果を示すことから、日本でも非認知スキルという言葉が浸透してきました。

高際先生:非認知スキルはユネスコやOECDが子供の将来的な成長や格差是正のカギとして位置づけており、渋谷教育学園でも、認知スキルと非認知スキルはどちらも子供の成長に必要な"両輪"だと考えています。

渋谷教育学園渋谷中学高等学校 校長の高際伊都子氏

岡田先生:非認知スキルという言葉が浸透してきたことで、テストの点数では測定できず見過ごされがちだった力も意識されるようになりました。保護者も入試に合格するだけでなく、その先も伸びていく力を求めておられます。ですから私たち学校側としても、「どのような入試で子供たちを見ていくべきか」「知識で測れない力をどう見出すか」ということをあらためて考えさせられています。

松本学園長:非認知スキルは、かつては家庭や周りの人々との関わりなど日常体験を通じて自然に身に付いていたと思うのですが、現場の感覚では、その土台が築けないまま過ごしている子供が増えてきた実感もあります。

高際先生:非認知スキルの多くは幼児期に土台がつくられると言われています。今は子育ての環境も変わり、感情のコントロールや協働する力、自制心、主体性などを自然と身に付けることが難しくなっているかもしれません。だからこそ、学校としてもその土台をどう補い、発展させていくかが問われていると感じています。

「自由」と「管理」の間…6年間の環境設計

松本学園長:中高6年間、非認知スキルを伸ばす土台として学校ではどのような取り組みをされていますか。

高際先生:渋谷教育学園渋谷では「自調自考」の理念のもと、生徒が主体的に学びに向きあうことを大切にしています。自由な校風という印象を持たれることがありますが、日々の勉強から生活面までサポートは手厚く行っています。細かく管理されることが合わない生徒もいれば、「自由にやりなさい」と言うだけではかえって負担に感じる生徒もいる。生徒ひとりひとりに適切な関わり方を見極めることが重要です。

岡田先生:西大和学園では「探究・誠実・気迫」を校訓に掲げています。学校を自由か管理かで区別されることがありますが、重要なのは子供たちが成長するための環境をどう設計するかです。かつて本校は「受験少年院」などと揶揄されたこともありましたが、本校の教育の目的は大学受験を突破することではありません。自分で目標を持ち、そこに向かって努力する経験をいかに多く積めるか。中高6年間を通じて、どの時期に何が必要かを見極め、生徒が集中して取り組める環境を整えています。

高際先生:学校が与えられるのは、生徒が自分で動くためのきっかけです。あるきっかけで動き始め、それが思いもよらなかった次のステップへつながることもある。私たちもそうしたひとりひとりの成長を後押しする環境づくりを意識しています。

岡田先生:思春期は他者との違いをどう受け止めるかが成長につながる時期でもあります。その点、共学という環境は多様な価値観に触れ、人としての幅を広げるうえで大きな役割を担っていますよね。

高際先生:それは大きいと思います。3月に行われたキャリア甲子園では、本校のチームがInnovation部門で優勝しました。決勝に進んだ4チームは、男女混合チーム、男子チーム、女子チームとそれぞれでした。チーム構成を工夫できるのも、共学という環境だからこそ生まれた発想だと思います。

岡田先生:テストの点数だけでは自分の価値を見失いかねないからこそ、そうやってさまざまな機会を通じて自分の強みを見つけられると良いですね。学校としては生徒が「自分がどこで輝けるのか」を模索できる場所を1つでも多く用意したいと思っています。

西大和学園中学校・高等学校 校長の岡田 清弘氏

高際先生:学校は、子供がもっとも活動的な朝から夕方までを過ごす場所です。その時間が楽しくない、あるいは意味を見出せないものになってしまうと、それはとてももったいないことですよね。もちろん、どんな生徒もずっと同じペースで走り続けられるわけではありません。エネルギーが落ちる時には立ち止まることもできる場所でありたいです。

松本学園長:遠回りや寄り道をしている時、ひと休みしている時こそ得られる学びもある。そうした時間を許容できるかも教育の大切な要素ですね。

東大推薦・海外トップ大に届く子の共通点

松本学園長:中学受験では点数という明確な基準で選抜されます。入学後、さらにハイレベルな集団の中で燃え尽きないためには何が大切でしょうか。

高際先生:燃え尽きるというよりは、志望校合格という明確なゴールがなくなったときに、勉強する目的を見失ってしまうということではないでしょうか。中高の6年間は、失敗やうまくいかない経験も含めて自分自身を理解し、アイデンティティを形成していく過程です。大人が思っている以上に成長のペースはひとりひとり異なりますから、一時的にモチベーションが下がったときには我慢強く見守ることも必要です。

岡田先生:中学受験を乗り越えてきた子供たちには努力の経験がありますから、新しい環境で立ち位置が変わっても大きく崩れることは少ないと感じます。ただ、合格というゴールを越えたら一度リセットし、自分自身に向きあう時間の重要性を保護者も理解しておくことが大切なのではないでしょうか。

松本学園長:大学入試では総合型選抜の割合が徐々に増えつつありますが、それには非認知スキルも大きく影響してきます。両校からは東大の推薦や海外トップ大への合格者が輩出されていますが、認知スキルと非認知スキルの両方を高いレベルで備えている生徒にはどのような共通点がありますか。

高際先生:いちばん大きいのは「自分事にできているかどうか」です。与えられた課題をこなすだけではなく、自分の興味や関心と結び付けて学びを深めていけるか。「やらされる勉強」から「自分のための勉強」へと転換できるかどうか、その違いは非常に大きいです。

東大学校推薦型選抜で多くの合格者を送り出してきたからこそ実感していますが、認知スキルが高いレベルにあることは大前提です。そのうえで、自ら課題を求め、その課題を膨らませることができる知的好奇心があるか、自分の問いとして深めていけるかが求められています。そうした生徒は、高いレベルで認知スキルと非認知スキルの両方を伸ばしています。

岡田先生:東大をはじめとする難関大や海外のトップ大に進学していく生徒は、「この分野を学びたい」「この大学に行きたい」というストーリーを自分の言葉で語れる子が多いです。入試を突破するための勉強も、「面白いからもっと調べてみよう」「なぜ自分はここでつまずくのだろう」といった捉え方ひとつで主体的に取り組める。高際先生が今おっしゃったように、認知スキルと非認知スキルを高いレベルで備えている生徒は共通して、自分の内側と向きあう経験を重ねているように感じますね。

非認知スキルが高い子の家庭が大切にしている3つのこと

非認知スキルと学力の関係と「伸びる子」の特徴とは?

松本学園長:非認知スキルが高い生徒のご家庭にも共通点はあるのでしょうか。

高際先生:1つは「短期的な成果だけを追い求めない」こと。テストの結果に浮き沈みがあっても、長期的な成長を見据えて子供と関わっている点です。もう1つは「子供が自分の言葉で表現できる環境がある」こと。達成感や悔しさ、不甲斐なさといった感情を素直に言葉にできると、自己肯定感やレジリエンス(復元力)も自然と高まっていきます。

岡田先生:いずれも共感します。付け加えるとすれば「脅さない」ことでしょうか。「今やっておかないと後で困るよ」「このままだと将来苦労するよ」と不安を煽ると、子供は本当にやってはいけないこととの区別がつかなくなります。安心して失敗できる、失敗しても笑顔で受け止めてもらえる心理的安全性のほうがはるかに重要です。非認知スキルは外から与えられるものではなく、経験の中で育っていくものですからね。

松本学園長:今の子供たちは10年前と比べて変化していると感じるところはありますか。

高際先生:失敗を怖がる生徒が増えている印象があります。順調に来ただけに「間違えたくない」「失敗したくない」という意識が強く、挑戦を避けてしまう場面も見られます。

松本学園長:私も同じように、子供たちが失敗して能力不足を見せたくないと、難しい課題を避ける傾向を感じます。家庭での関わりも影響があるのでしょうか。

高際先生:保護者自身、大きな失敗なく成功してきた方が多いからか、わが子が進む道に小石が落ちていたら先回りして取り除こうとする傾向があるかもしれません。けれども、失敗の影響が小さい年齢にこそ、あえて失敗を経験させることが必要ではないでしょうか。うまくいかなくて泣く、悔しくて怒りが込み上げる…すべて貴重な経験です。「うちの子は成長の真っ只中にいるな」と受け止めてほしいです。

岡田先生:そうですね。もうひとつあげるとすれば、個性的で尖った子が少なくなった印象もあります。ただしそれは、コロナ禍の影響で集団生活を通じて自然と身に付けるはずだった経験ができなかった影響かもしれません。こうした変化を丁寧に見守りながら、学校としてできることを考えていかなければと思っています。

親ができるのは「手を放す勇気」をもつ

松本学園長:先行きが見通しにくい時代ですが、最後に今子育て中の保護者に向けて、アドバイスをお願いできますか。

浜学園 学園長の松本茂氏

高際先生:本校では「エネルギーと能力は掛け算」という話をよくしています。どれだけ能力があってもエネルギーがなければ発揮できません。逆にエネルギーがあれば能力を押し上げることができます。保護者の方には、わが子のエネルギーを削いでしまうことのないよう、子供を信じて見守る姿勢を大切にしていただきたいです。子供は親とつながっているという安心感があれば必ず戻ってきます。一度、つないでいる手を放してあげることで成長の幅も広がり、親子の絆も強くなるのではないでしょうか。

岡田先生:非認知スキルというと難しく聞こえますが、当たり前の日常の中で育まれていくものです。ぜひ親子で共有する時間を大切にしてください。高際先生がおっしゃった、親とつながっている安心感も、そうした時間が土台になるはずです。そして、子供が自分で試行錯誤できる余白を十分に残しておくことも忘れずに。それが非認知スキルの土台になるはずですから。

松本学園長:いつの時代も、子供たち自身はしなやかで、可能性に満ち溢れています。浜学園としても、認知スキルと非認知スキルの両面から子供たちの成長を長い視点で支えていきたいです。今日は貴重なお話をありがとうございました。


 取材では、中学受験への挑戦に伴い、習い事をはじめ、子供が好きなことや没頭していることを中断してしまうのは、私学の立場ながら多少矛盾を感じるという話にも及んだ。子供の「好き」や「夢中」は、非認知スキルが大きく伸長する起点になる。そして、非認知スキルは認知スキルを伸ばしていく。認知スキルと非認知スキルの両輪を、特別な教育ではなく日常の中で育んでいくことの重要性をあらためて実感した対談だった。

浜学園の非認知スキルトレーニング「WEBSTAR」の詳細はこちら「浜学園」の学びについて詳しくみる

《畑山望》

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