未経験から世界へ、玉川大学のロボットチームが育む挑戦する力

 「RoboCup(ロボカップ)世界大会2026」で、玉川大学のロボットチーム「eR@sers(イレイサーズ)」が、生活支援ロボットの技術を競う@ホームリーグでベストヒューマノイド賞を受賞した。イレイサーズの活動を支える工学部の水地良明准教授、堀三晟講師と、学生2人に、玉川大学での学びと成長について聞いた。

教育・受験 高校生
PR
未経験から世界へ、玉川大学のロボットチームが育む挑戦する力
未経験から世界へ、玉川大学のロボットチームが育む挑戦する力 全 11 枚 拡大写真

 2026年6月30日から7月6日にかけて韓国・仁川で開催された自律型ロボットの世界的な競技会「RoboCup(ロボカップ)世界大会2026」で、玉川大学のロボットチーム「eR@sers(イレイサーズ)」が、生活支援ロボットの技術を競う@ホームリーグで「Best Humanoid Award(ベストヒューマノイド賞)」を受賞した。国内チーム唯一の二足歩行ヒューマノイドで参戦し、世界のチームと競いあった学生たちは、どのような大学生活を送ってきたのだろうか。

 チームで開発の中心を担った学生2人は、入学当時はプログラミング未経験だったという。そんな学生が最先端の研究用ロボットに触れ、仲間と試行錯誤を重ねながら世界の舞台に立つ。その成長を後押ししているのが、1年生から利用できる学生たちの挑戦の拠点「ロボティクスラボ」と、学年や研究室の垣根を越えて学びあえる環境だ。イレイサーズの活動を支える工学部の水地良明准教授、堀三晟講師と、学生2人に、世界大会に挑むまでの歩みやロボット開発の現場、玉川大学での学びと成長について聞いた。

【話を聞いた人】

水地良明先生工学部情報通信工学科 知能ロボティクス研究室 准教授/eR@sers代表

堀三晟先生工学部情報通信工学科 計算機システム研究室 講師/eR@sers

仲戸川凱さん大学院工学研究科電子情報工学専攻 修士課程1年

能登稜介さん工学部情報通信工学科4年


世界約40か国・地域から約3,000人が参加したRoboCup 2026世界大会 @Homeリーグで「ベストヒューマノイド賞」を受賞

世界大会につながる、1年生からのロボット開発

--世界大会でのベストヒューマノイド賞ご受賞おめでとうございます。まず、イレイサーズの活動について教えてください。

水地先生:ありがとうございます。イレイサーズは、人の暮らしを支えるロボットの開発・研究に取り組むチームで、2008年から活動しています。情報通信工学科の複数の研究室と脳科学研究所が連携し、ロボティクスラボを拠点に活動しています。ロボカップは研究成果を実際の環境で評価する場であると同時に、学生が切磋琢磨しながら成長する教育の場でもあります。工学部の学生を中心に活動していますが、学部・学科による制限はなく、1年生から希望者は誰でも参加できます。サークルのように気軽に参加できる一方で、教員の指導のもとで博士課程の先輩や学外の研究者らと世界的に最新のロボットの研究にも取り組める。その両方の側面を併せもつことがイレイサーズの特長です。

水地良明先生(工学部情報通信工学科 知能ロボティクス研究室 准教授)

--どのような点が受賞につながったとお考えですか。

堀先生:今回の世界大会では、二足歩行ヒューマノイドロボットが競技課題を安定して遂行できたことが注目され、評価につながったと感じています。@ホームリーグには、訪問客を案内したり、洗濯物を片付けたりと、生活のさまざまな場面を想定した課題があります。上位半分のチームだけが参加できる、レストランのウェイター役を務める難度の高い課題にも二足歩行ヒューマノイドロボットで唯一参戦しました。車輪型ロボットに比べて二足歩行ヒューマノイドロボットは動作の安定化が難しいのですが、二足歩行で自律的に競技課題をこなせたことが受賞の大きな要因だったと考えています。

堀三晟先生(工学部情報通信工学科 計算機システム研究室 講師)

水地先生:ロボカップは学生だけではなく、研究者や技術者も参加しますが、イレイサーズは学部生も主力として開発を進めています。現地では想定外のことも起きますが、学生たちが柔軟に対応して、期待を超える活躍を見せてくれました。

--これまでの活動でも、さまざまな実績を残されているそうですね。

水地先生:はい。2024年のロボカップ世界大会@Homeで世界2位および特別賞「Soul of the Party」を受賞したほか、大阪・関西万博で開催された「WRS Future Convenience Store Challenge 2025」でもDaily Winnerを獲得してきました。さらに大会での課題意識を研究に生かし、当時3年生の竹中直哉さん(工学部情報通信工学科)が計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2024)で「優秀講演賞」を受賞するなど、学びを学術的な成果へとつなげる学生も育っています。こうした日々の積み重ねがあったからこそ、今回の結果に結びついたと感じています。

--仲戸川さんと能登さんは、どのような役割を担ったのでしょうか。

仲戸川さん:僕は二足歩行ヒューマノイドロボット「G1」の開発を担当しました。ロボットの制御から、課題を実行するために必要な機能まで、全体的な実装に取り組みました。

能登さん:僕は、仲戸川先輩が開発した機能を使って、ホームパーティーに来たゲストを案内する課題のプログラムを作りました。

玉川大学のロボットチーム「eR@sers(イレイサーズ)」の仲戸川さん(左)と能登さん(右)

水地先生:前年まで使っていた車輪型のロボットとは違い、2025年に導入した二足歩行ヒューマノイドロボットは、基本的な機能から新たに開発する必要がありました。蓄積されたノウハウが十分にない中で、仲戸川君を中心に試行錯誤を重ね、1年足らずでロボカップに出場できるまでのものを作り上げてくれました。

入口はドローンとVR、入学後に出会ったロボットの面白さ

--玉川大学工学部を選んだ理由と、イレイサーズに入ったきっかけを教えてください。

仲戸川さん:大学入学時はプログラミングの知識がなく、ロボットにも関心がありませんでした。中学3年生のころにドローンに興味をもち、操縦して写真や動画を撮ることにハマっていき、高校生のころから撮影の仕事もいただけるようになりました。大学でもドローンの研究を続けたいと思っていましたが、操縦するだけでは物足りなくなって、自律的に動かすプログラムを学びたいと考えました。そうした中で、玉川大学にドローンの研究をしている先生がいると知ったことが、入学のきっかけです。

 入学後、その先生にイレイサーズを紹介していただき、少しずつプログラミングやロボット開発を学ぶうちに、気付けばロボットそのものに夢中になっていました。

仲戸川凱さん(大学院工学研究科電子情報工学専攻 修士課程1年)

能登さん:僕は北海道出身で、東京に出たいという気持ちがありました。高校時代はパソコンにはほとんど触れていませんでしたが、社会に出る前にパソコンを使えるようになりたい、プログラミングのスキルも身に付けたいと考えて玉川大学工学部を選びました。

 イレイサーズに入ったきっかけは、このガラス張りのロボティクスラボの前を通りかかったときに、VR機器が見えたことです。VRのゴーグルを装着して、その場で体験できる最新装置を見て「ここならVRが体験できる、面白そうだ!」と思い、扉を開けたのがイレイサーズとの出会いでした。

能登稜介さん(工学部情報通信工学科4年)

水地先生:VR機器は、人とロボットのやり取りを仮想空間で研究するために使っています。能登君はその興味を入口に、まず@ホームシミュレーションの競技に取り組みました。そこでロボットを動かすための知識や技術を身に付け、やがて実機開発にも挑戦するようになりました。ロボティクスラボにはさまざまな分野への入口があり、興味をもったところからスタートして活動を広げていけるのも特長です。能登君もその1人で、今年のジャパンオープンでは@ホームシミュレーション優勝という成果を残しました。

玉川大学の「STREAM Hall 2019」内に、イレイサーズの活動拠点「ロボティクスラボ」が設置されている
ガラス張りの「ロボティクスラボ」。イレイサーズの活動拠点であり、ロボット研究の成果を発信するショールームでもある

「動かない!」が成長のきっかけ

--ロボットに触れて学べる環境には、どのような意味がありますか。

堀先生:コンピュータの中で動くことと、現実にものが動くことには大きな違いがあります。書いたプログラムをロボットに載せてスタートボタンを押しても、思ったとおりには動きません。むしろ「なぜ動かないのか」を考えるところから学びが始まります。このラボにはキッチンや洗濯機、食洗機などがあり、すぐに試行錯誤できる環境があることが大きな強みです。

水地先生:最先端の開発現場では、解決方法だけでなく、どんな課題があるのかさえわからないことがあります。だからこそ、自ら問題を見つけ、情報を集めて解決する力が重要です。高価な研究用機材を学生に使わせるのはリスクもありますが、実際に触ってこそ得られる経験があります。失敗を恐れず挑戦してほしいですね。

--仲間との開発を通じて、ご自身の考え方や取組み方は変わりましたか。

能登さん:最初は手探りで、大変なことばかりでした。以前はエラーが出ると、その部分だけを直そうとしていましたが、先輩たちと関わる中で、問題を細かく分けて原因を探るようになりました。課題を整理して考える力が身に付いたと思います。

仲戸川さん:僕は以前、自分で作ったものは自分がいちばん理解していると思い込んでいました。でも、たとえば能登君に、僕が作ったプログラムを使ってもらうと、「ここが動かない」「この部分がおかしい」と、使う側から意見が返ってきます。そうした意見を取り入れることで、より良いものになっていくので、みんなで一緒に作るのが効率的な方法なんだと、考え方が変わりました。

教員と学生の距離の近さも魅力

堀先生:この分野には、教科書やマニュアルには載っていないノウハウがたくさんあります。学部1年生から大学院生までが同じ場所で一緒に活動し、経験を共有できるのは大きな強みです。新しい技術については、学生から教わることもあります。

水地先生:毎週のミーティングでは学年を問わず目標や課題を共有しています。1年生も大学院生や教員と同じ議論に参加しながら成長していきます。そうした学びあいの積み重ねが、イレイサーズの強さにつながっていると思います。

世界で試されるのは技術だけじゃない、自ら伝え動く力

--世界大会では、技術以外にも学べることが多そうですね。

堀先生:世界大会では、ロボットを海外へ輸送し、世界中の参加者や審判と関わりながら競技に挑みます。審判とのやり取りも英語です。疑問があれば自分から英語で確認し、意見を伝えなければなりません。黙っていては何も始まらないため、自ら働きかける力が自然と身に付きます。

 競技中は、開発した学生自身がロボットのそばで審判への説明や受け答えを担当します。同じロボット開発に取り組む仲間同士なので、片言の英語でも意外と伝わります。国を越えた交流も生まれますし、こうしたコミュニケーションの経験は将来にも生きると思います

仲戸川さん:二足歩行ューマノイドロボットは、@ホームリーグでの前例が少ないので、安全性についても厳しく質問されました。「安全に止めるときの仕組み」といったことを説明する必要があり、英語で対応しました。

能登さん:英語は得意ではありませんが、伝えようとすれば意外と伝わることを実感しました。

水地先生:大切なのは、説明する中身をもっていることで、自分たちが作ったものを深く理解していれば、英語が流暢でなくても伝えられます。また、練習用のフィールドを使いたいときにも、ほかのチームに予定を聞いて、次に使わせてもらう交渉が必要です。そういう経験は、学内だけではできません。

学年や立場を越えた対話が、ロボット開発と学生の成長を支えている

--大学はどのような支援をしているのでしょうか。

堀先生:世界大会ではロボットを海外へ送るために輸出手続きなどが必要で、教員や学生だけでは実現できません。大学の事務部門を含め、多くの方々に支えられています。

水地先生:ノウハウを継承し、チームとして成熟していくためには持続的な活動が必要不可欠で、それは大学や企業の支援に支えられています。そのためには、教育と研究が結び付いていることも重要です。大会で見つかった課題を掘り下げ、実社会で役立つ研究へつなげていく。イレイサーズには競技に取り組む班と研究に取り組む班があり、両方に参加する学生もいます。競技で生まれた工夫が、学会発表につながることもあります。このような取り組みから生まれる高い教育効果や技術的優位性が、新たな支援や持続的な活動につながっています。

広がる将来の選択肢

--活動を通じて、将来への考えに変化はありましたか。

仲戸川さん:自分の好きなことが社会貢献や仕事につながれば、という思いは変わっていません。高校時代からドローンの撮影の仕事をしてきましたが、今は起業して、ヒューマノイドロボットの開発や、子供向けのロボット・プログラミングの講習などにも取り組んでいます。

 ヒューマノイドロボットの活用を目指す企業に、開発の進め方を助言することもあります。開発現場で培った知識や経験を生かせる場面が増えました。イレイサーズの活動をしていなければ、新しい技術に次々と挑戦しようとする行動力は身に付いていなかったと思います。

能登さん:将来の夢が大きく変わったというより、社会で働くために必要な力をここで身に付けている感覚があります。その中で、技術者として働くことも将来の選択肢の1つになりました。

--最後に、大学選びをしている中高生や保護者に、玉川大学のロボットチームで学ぶ魅力を伝えてください。

仲戸川さん:先生との距離が近く、わからないことを相談しやすいところも魅力です。僕は授業の合間や、予定のない日にもロボティクスラボへ来ます。休憩するような感覚でプログラムを書いていることもあり、もう1つの居場所ですね。

能登さん:大学の中に、自分が根を張れる場所があるのはありがたいです。ここへ来て作業したり、休憩したり、自由に使える場所になっています。勉強で困ったときにも先生方を頼れますし、こういう場所があること自体が、大学に来る理由にもなっています。

堀先生:ロボット開発は、さまざまな技術が組み合わさった、裾野の広いテーマです。一見別々に見える興味や技術も、掘り下げていくとつながっていきます。実際のものを動かしたい人には、ぜひこの環境を知ってほしいです。

水地先生:この場の魅力は、機材や設備だけではなく、人にもあります。膨大なコストがかかる世界大会に毎年継続して参戦できる他にはない支援体制があり、先輩たちが積み重ねた経験や知識が、新しく入った学生へと受け継がれていく。そうした環境の中で、家事や来客応対など日常生活の場面で人と協調できるフィジカルAIの実現という共通テーマに向かって、学生が主体的に挑戦するからこそ成長につながるのだと思います。

 入学時点で専門分野が決まっていなくても構いません。「何かを学びたい」「やってみたい」という気持ちをもって飛び込めば、興味をもてる題材や仲間に出会えるはずです。知識や技術だけでなく、人との関わりや経験を通じて成長していく。そうした玉川学園の全人教育の考え方が、この環境にも息づいています。

--ありがとうございました。


 ドローンやVRを入口に、ロボット開発へと踏み出した2人。お話から見えてきたのは、挑戦できる設備と居場所、そして一緒に考える人がいることで、広がっていく学びの過程だった。何を学ぶかに加えて、誰とどのように学ぶか。玉川大学のロボティクスラボには、大学生活とその先を考えるための具体的な手掛かりがある。

玉川大学入試情報サイト
入試Navi
AI×ロボット×ICTを活用して
人と社会の新たなつながりを生む人を育てる

玉川大学工学部 情報通信工学科

《畑山望》

この記事の写真

/

特集