【大学受験】保護者も知りたい「情報I」共通テスト対策のポイント

 平均点が約13点下がった2026年度の共通テスト「情報I」。差がつくポイントはどこにあり、限られた時間でどう対策すれば良いのか。駿台予備学校の樋田稔氏が、プログラミング問題を中心に、高得点獲得のための学習法と本番の戦略を解説。

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駿台予備学校池袋校で行われた共通テスト「情報I」特別講義のようす
駿台予備学校池袋校で行われた共通テスト「情報I」特別講義のようす 全 13 枚 拡大写真

 2026年9月19日、駿台予備学校池袋校で「2027年度 共通テスト『情報I』特別講義」(ライフイズテック協賛)が開かれ、駿河台学園 コーポレートPR部長兼駿台ITビジネスカレッジ部長の樋田稔氏が「プログラミング徹底攻略と高得点獲得のための対策方法」と題した講演を行った。連休初日の午前にもかかわらず、会場には高校生や高卒生、保護者ら約60人が集まり、新しい科目の対策法に熱心に耳を傾けた。

 2025年度から大学入学共通テスト(以下、共通テスト)に加わった「情報I」は、国立大学では原則としてすべての大学で必須となった。一方、平均点(100点満点)は2025年度の69.26点から、2026年度は56.59点へと約13点下がっている。「プログラミングはみんなが苦手。だからこそ差がつく」と樋田氏が強調する理由とは。本稿では、高校教諭とシステムエンジニアの両方の経験をもつ同氏が語った、共通テスト「情報I」の最新動向と高得点獲得に向けた学習法をレポートする。

駿河台学園 コーポレートPR部長兼駿台ITビジネスカレッジ部長 樋田稔氏

AIが共通テストを解く時代に、「情報I」を学ぶ意味

 他教科の対策に追われる受験生にとって、「情報I」に重きを置くのは簡単ではない。講演は、「なぜ『情報I』を学ぶのか」という問いから始まった。

 樋田氏がまず示したのは、社会が求める人材像の変化だ。経済産業省の「未来人材ビジョン」によると、2015年に重視された能力は「注意深さ・ミスがないこと」「責任感・まじめさ」などだったが、2050年の予測では「問題発見力」「的確な予測」「革新性」が上位を占める。与えられた問題を速く正確に解く力から、自ら問題を見つけて解決する力へと、求められるものが移りつつある。

2050年に求められる人材像(経済産業省「未来人材ビジョン」より)

 その変化を象徴するのがAIの進化だ。講演では、2026年度の共通テストをAIに解かせた結果も紹介された。満点の科目もあり、ほかの科目もほぼ100点に近かったという。「皆さんが社会人になったとき、『共通テストの問題を解いてください』という仕事はない。同じ程度の仕事はあっても、それはもうAIに任せる時代」と樋田氏は話す。決められた問題を正確に解く仕事をAIが担うようになるからこそ、人間には問題を見つけ、解決する力が求められる。こうした力を身に付けるための入り口となるのが「情報I」であり、「Society 5.0時代を生き抜く力を養う学問として捉えてほしい」と呼びかけた。

 「情報I」を学ぶ意義は、将来の仕事のためだけにとどまらない。昨今増加しているランサムウェアやフィッシング詐欺などのサイバー犯罪の被害者にはセキュリティ教育を受けていない高齢者も多いという。高校生全員が学ぶ「情報I」は、こうした被害から身を守る知識を社会全体に根付かせる役割も担っていると説明された。

大学で異なる扱い、素点のまま第1段階選抜に使う大学も

 講演の2つ目のテーマは、大学入試での「情報I」の扱いだ。「『情報I』ほど大学によって扱いが違う科目はない」と樋田氏は言う。難関国公立大学や医学部などでは、共通テストの総得点で第1段階選抜を行うことが多い。東京科学大学(理工学系・前期)の2026年度入試では、「情報I」も他教科と同様に素点100点のまま合計され、第1段階選抜の基準に用いられた。実際に、ほかの教科は一定程度の点数が取れていたのに「情報I」で大きく失敗し、個別試験に進めなかった例もあったという。同大学は2028年度入試から、共通テストと個別試験を1対5の配点比率で合算して合否を判定する方式に変わる予定だ。

国公立大学の一般選抜――第1段階選抜と「情報I」の関係

 一方、国立大学全体では「情報I」の配点を他教科より圧縮する大学が約7割を占める。たとえば一橋大学商学部(前期)では、総合点に占める「情報I」の割合は約5%だ。高校生の授業以外の自習時間を約3,000時間とすると、配点比率5%の科目にかけられるのは約150時間に過ぎない。「できるだけ短い勉強時間で高得点を出す勝負になっており、厳しいミッションをもった科目」と樋田氏は表現する。

 私立大学では、「情報I」を選択科目の1つとし、選択科目のうち最高得点の科目を採用する大学もある。早稲田大学政治経済学部がその一例で、「情報I」で高得点を取っておくことは「保険になる」と説明した。

 入試での利用状況をまとめると、国立大学は原則としてすべての大学で必須、公立大学は選択科目にとどめる大学や利用しない大学もあるなどばらつきがあり、私立大学は利用の有無を大学ごとに判断している。配点比率も大学しだいで、同じ学部内でも学科によって異なる場合がある。そのため樋田氏は、必ず志望校の公式サイトで、受験する年度の扱い(必須か選択か、配点は何点か)を自分で確認してほしいと強調した。受講者には、志望校の配点比率をグラフで確認できる「共通テスト配点グラフ作成ツール」などを掲載した「講演補助サイト」も提供された。

共通テスト「情報I」の入試での利用まとめ

「情報I」の核は問題解決、ふだんの勉強やその先にも生きるプロセス

 続いて、「情報I」の学習内容を俯瞰した。学習指導要領が示す4本柱は「情報社会の問題解決」「コミュニケーションと情報デザイン」「コンピュータとプログラミング」「情報通信ネットワークとデータの活用」。もっとも重要なのは「情報社会の問題解決」で、ほかの3つはそのための道具だと位置付ける。

 問題解決のプロセスは、①問題の特定、②情報収集、③情報の整理・分析、④解決策の検討、⑤解決策の実行、⑥振り返りと評価の6つに分けられる。日々の学習はもちろん、進学・就職後のさまざまなシーンでも生きるのだ。樋田氏は、「返却された模試の結果を受けて、より高得点を取ること」を例に、各プロセスを紹介。「勉強時間を増やすだけでは、問題が特定できない。答案を分析して課題を見つけ、改善策を考えて実行し、その結果を検証する。そうした問題解決の手法を身に付けるのが『情報I』なのです」。

他の科目の学習や生活する上でも活用できる考え方 問題解決のプロセス

正答率は階段状に低下、プログラミングで差がつく

 話題は、樋田氏が重点分野として位置付ける「プログラミング」へと移った。2026年度の小問別正答率を見ると、第3問(プログラミング)は設問が進むにつれて正答率が階段状に下がっていた。最初でつまずくと、その後もドミノ式に間違えてしまう構造だ。駿台が生徒の学習に採用しているWeb教材「情報AIドリル」(ライフイズテック)に寄せられた質問約3,000件を分析しても、プログラミングの章が全体の31.9%を占めた。誰もが苦労する分野だからこそ、時間をかけずに戦略的に得点できれば大きなアドバンテージになる。

情報AIドリル 章別の質問件数

 樋田氏は、実際にプログラムを書く部分はごく一部で、「問われているのは、問題文を正確に読み解く力。問題文を理解し、どんなプログラムを作る必要があるのかを定めなければ、プログラミングはできない」と指摘する。

 共通テストの「情報I」は、会話形式の問題文が約1.2万字にも及ぶ。1分あたり600字、約20分で一読できる速さを目標に、「天声人語」や「春秋」など、新聞コラムを毎日1本、時間を計って読み、要点を自分の言葉で一言にまとめる練習が勧められた。あわせて、論理的思考の「MECE(ミーシー)」を紹介。これは手持ちの情報を整理するフレームワークとして広く取り入れられているもので、たとえば「未成年(18歳未満)/成人(18歳以上)」のように「漏れなく、重複なく」分けるために用いられる。プログラムの条件分岐はまさにこの作業であり、問題文から「条件」を読み取る意識が、得点を左右すると強調した。

論理的な思考をもって問題にあたる ~MECEを使う~

「リンゴ5個」と「1キロ」、基本構造と「プログラムの型」を押さえる

 共通テストでは高校によって使う言語が異なるため、「共通テスト用プログラム表記」が使われる。「もし~ならば」「~を繰り返す」など日本語を用いて出題されており、「構える必要はない」と話した。

 世の中に実装されているプログラムは、複雑かつ難解に見えるものが多い。しかしその構造はシンプルで、すべてのプログラミング処理は「順次」「分岐」「反復」の3つで構成されている。料理にたとえれば、「切る→炒める→味付け」が順次、「味が薄ければ塩を足す」が分岐、「柔らかくなるまで煮込む」が反復にあたる。共通テストに出る繰り返し処理は、回数があらかじめ決まっている「回数指定型」と、条件を満たす間だけ繰り返す「前判定条件型」の2種類のみ。八百屋で「リンゴを5個ください」と頼まれるのが回数指定型、「1キロください」と頼まれ、量りながら個数を決めるのが前判定条件型だ。

プログラムの基本3構造

 苦手な人にこそ「持ち帰ってほしい」と力を込めたのが、変数の値の変化を表に書き出して追う「変数遷移表」だ。1から5までの和を求めるプログラムで合計の初期値を誤ると答えは16になるが、変数遷移表でトレースすれば原因を突き止められる。「面倒に思うかもしれないが、間違いがないようにプロでもやっている」と樋田氏。このほか、合計・平均や最大・最小、値の交換、並べ替えなど「プログラムには型がある」とし、頻出パターンの習得を勧めた。

 講演では、2026年度の第3問を題材に、具体例で状況をつかみ、考え方を一般化し、プログラムに置き換えて改良するという出題の流れに沿って解き方を実演。無料で使える学習用サイトで実際にプログラムを書き、エラーを直す経験を重ねることがプログラミング力の向上につながるとも紹介した。

アルゴリズム:変数遷移表でトレースして、バグを修正する

第1問は用語の「役割」で覚える

 正答率の低さが目立った第1問の対策として紹介されたのが、情報処理学会情報入試委員会が作成した「情報科全教科書用語リスト」*だ。全5,846語のうち、情報Iの教科書13冊での出現率を示す「総意率3」で並び替え、0.61以上の用語から優先して覚えると効率的だという。2025年度と2026年度の本試験では、総意率が比較的高い専門的な用語の出題が増えていると分析した。(*本記事の説明は「情報科全教科書用語リスト」初版に基づく。2026年10月13日に第2版が公開されているため、用語学習にあたっては最新版の内容を確認してほしい。)

 覚え方のポイントは、用語を無機質に丸暗記しないことだという。それぞれの用語が「どんな役割を果たしているのか」に常にこだわり、ほかの用語と関連付けて理解することが、第1問をしっかり解くカギになると説明した。講演補助サイトには、出現率の高い約300語の関係を図示した「用語関係図」も用意された。情報セキュリティの3要素「機密性・完全性・可用性」を「機密は完全かよう(可用)」と覚えるなど、語呂合わせも有効だ。計算問題は進数変換や単位変換など8タイプ程度に限られるため、情報AIドリルなどでパターンに慣れておくと良いという。

頻出問題 自分独自の具体例をいつでも言えるようにしておく

難易度は安定も問題量が増加、2027年度は専門用語が増える見込み

 講演の終盤では、2025年度と2026年度の共通テスト「情報I」の結果を比較した。得点分布を比べると山の形はほぼ同じで、平均点が下がったおもな要因は、解答数が51から60に増えた問題量にあるという。2027年度は、問題量が2026年度よりやや減る一方、専門用語の数は増え、難易度は同程度になると予想。年を追うごとに高校での「情報I」の学習環境が整い、より専門性の高い問題が増えるとみられるためだ。そのうえで、教科書を読むだけでなく、早めに問題に挑戦し、知識の穴を埋めていくことが大切だと強調した。

2027年の共通テスト「情報I」出題傾向イメージ

 試験本番に向けて提案されたのが、解く順番の工夫だ。第1問、第2問、第4問を先に解き、プログラミングの第3問は最後に回す。第3問は最初の設問でつまずくと連鎖的に失点するため、残り17分ほどを確保し、序盤の設問ほどペースを落として慎重に解くと良いという。さらに、これからの学習で意識したいポイントとして「早めの問題へのチャレンジ」と「日ごろの『なぜ?』を大切に、構造的・論理的に情報を理解すること」をあげ、こうした姿勢はほかの教科の学習にも役立つとした。

「情報I」を攻略する6つの得点戦略

 見落としがちなのが、試験の時間帯だ。「情報I」は2日間にわたる共通テストの最後、2日目の午後5時から行われる。樋田氏はこれを「フルマラソンの38キロ地点」にたとえ、疲れて「もう寝よう」と思ったときこそ1問解いてみるなど、疲れた状態で粘る練習を勧めた。講演の最後には、「今日の話を聞いただけで、すぐ点数が上がるところはない。行動に移さないと1点にもならない」と述べ、学んだ内容を早めに実践に移すよう受講者に呼びかけた。

駿台の冬期講習・直前講習第一志望は、ゆずれない。
駿台予備学校

《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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