アンフェアに挑んだ27歳、3つの教育格差をゼロに…アオイゼミ塾長 石井貴基氏

 中高校生向けにスマートフォンやタブレットを使ったライブ授業を提供している「オンライン学習塾アオイゼミ」。アオイゼミを起ち上げた株式会社葵代表取締役兼塾長の石井貴基氏に、IT技術を活用したアオイゼミの設立から教育への展望までを聞いた。

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株式会社葵代表取締役の石井貴基氏。塾長としても、生徒たちから慕われている
株式会社葵代表取締役の石井貴基氏。塾長としても、生徒たちから慕われている 全 6 枚 拡大写真
◆昼はバイト、夜は授業…従業員の給料のため続けた「二足のわらじ」時代

--システムの外部委託から自己開発まで、気付いてからの行動が早いですね。

 あのときは、常に危機感をもっていましたからね。予算もなかったので学生のエンジニアを集めて、自社開発で現在のアオイゼミの原型を作り上げました。現在もですが、昔からアオイゼミは学生のインターンに支えられています。従業員の給料を支払うため日中は創業者3人でバイトをして、夜にアオイゼミの授業を行うという二足のわらじ状態が1年半続きました。とにかくお金がなく、役員3人は共同生活をしていて、食費が月1万円だった時期もあります。

 自社開発を行うようになってから、アオイゼミは現在もシステム開発からコンテンツ開発まですべて自社で行っています。どうしても人が多くなりますので、ある意味私たちのようなベンチャーはやるべきではないのかもしれませんが、これもこだわりのひとつです。

 講師とエンジニアは、開発担当や講師といった職域を超えてお互いを尊敬して仕事やプロジェクトを行っています。メンバーは若手が多く、既成概念にとらわれません。しかし、教育サービスとしてはまだまだ新しく実力不足なので、歴史ある教育産業の先輩方にお話を聞くなどして勉強をしています。

--開業当時のユーザー数はどのぐらいでしたか。

 最初はPCのみだったこともあり、月に数百人ほどの新規登録者数でした。転機が訪れたのは、iPhone版をリリースした2013年8月です。1日の登録者が数百人単位で増え、10倍以上になりました。当時はアプリをリリースしただけで、ここまでユーザーが増えるのかと驚きました。その後、KDDIが行っている起業家支援プログラム「∞Labo(ムゲンラボ)」に参加し、それ以降はぎりぎりの経営からなんとか脱出できました。

◆資金調達で講師の充実とサービスの拡充をねらう

--11月25日に総額2.8億円の資金調達したことを発表されましたね。資金調達に至った背景を教えてください。

 もともとKDDIさんとは∞Labo(ムゲンラボ)でお世話になっていたこともあって、資金調達をご相談してみました。資金調達のねらいのひとつは、講師陣を充実させることです。

 講師はまず人柄として謙虚で、かつライブストリーミングという新しい授業を受け入れられる柔軟性があること。常に数字を意識した成果主義であること。これは売上だけでなく、子どもの成績をいかに上げられるかということです。ゼミとしては成績が上げられないと価値がないですから。

 私も講師を担当していたので経験がありますが、3か月ぐらいやっていると、カメラの先に子どもの顔が浮かんでくるようになります。私たちは、ただ授業の映像を収録しているわけではありません。カメラの先には数千人の生徒たちがいます。"人と人とのコミュニケーション"がいちばんコアなところで、そうしたことを意識して授業できることは、経歴よりも大切なことだと思っています。

【次ページ】「教育の格差をゼロに…伴走とIT技術で子どもの未来をサポート」
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《相川いずみ》

教育ライター/編集者 相川いずみ

「週刊アスキー」編集部を経て、現在は教育ライターとして、ICT活用、プログラミング、中学受験、育児等をテーマに全国の教育現場で取材・執筆を行う。渋谷区で子ども向けプログラミング教室を主宰するほか、区立中学校でファシリテーターを務める。Google 認定教育者 レベル2(2021年~)。著書に『“toio”であそぶ!まなぶ!ロボットプログラミング』がある。

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