なぜ受験生が集まるのか? 広尾学園、5年連続志願者増の理由に迫る

 独自の校風と常に改善を試みる姿勢で志願者を伸ばし続けている、東京の中高一貫校「広尾学園」。2012年以降、5年連続で受験者数が増加している理由は何なのか。広尾学園の冨田宗良先生と金子暁先生に話を聞いた。

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広尾学園2016年の中学入試を受ける受験生
広尾学園2016年の中学入試を受ける受験生 全 6 枚 拡大写真
◆定員を減らしたクラスも志望者は増加

--昨年から比べて、入試の変化はありましたか。

冨田先生:数で言いますと、240名という全体の枠が変えられないなかで、医進サイエンスコースと、インターナショナルコースのスタンダードグループの定員が各40名ずつだったのを、2015年から35名に減らしました。これは教育していくのであれば35名ぐらいが最適だという判断だったのですが、結構大きい割合になります。「なぜ」という声もあり、もしかしたら志望者への影響もあるかもしれないと懸念したのですが、結果として影響は一切ありませんでした。特に医進サイエンスコースの伸びは予想を超えるものになりました。また、インターナショナルコースは昨年から2クラスに増設したため一気に志望者が増加しました。今年は、スタンダードグループの枠を35名に減らしたものの、影響なく志望者が増えています。

 説明会に来られる保護者の方の雰囲気は毎年変わるのですが、特に2015年の説明会では雰囲気が大きく変わったように感じました。熱烈な広尾学園のファンばかりというわけではありませんが、とても深いところまで突っ込んだ質問をされる方が多い。難関校を受ける保護者の方が増えているようです。

金子先生:毎年併願校のパターンも変化していますが、今年は御三家をはじめ最上位校との併願が急速に増えていますね。

◆既存の枠を取り払うことで生徒の力を伸ばす

--広尾学園は、ICTを積極的に導入しているイメージが大きいと思いますが、その点のご評価はいかがでしょうか。保護者の期待感はあるのでしょうか。

金子先生:あると思います。家庭で教育に熱心であっても、教育がどんどん変わっていく中、把握するのは難しいですよね。それを教育の専門である学校が提案していけると思います。

--昨年、デジタルファブリケーションのラボを立ち上げられましたよね。

金子先生:最初のきっかけは生徒から、コミュニティの空間を作りたいという提案からでした。3Dプリンターなどを導入してほしいと。現在、ラボは生徒たちが運営しています。

--それだけ柔軟な受け皿が学校にあるということですね。

金子先生:これまでの学校では、生徒から質問されたときに教師は「知らない」とは言えなかった。けれど、私たちは知らないことは知らないと言います。生徒も専門性の高いことをしているので、分野が違うとわからないこともある。

 伝統の重みや積み重ねがない分、時代に合わせて必要なものを選択していける。それは強みだと思います。今までの学校は枠の中でやりなさいという傾向があり、それは教師としても楽だった。けれど、時代の流れもあり、その枠に納得や満足ができない生徒もいる。その枠を取り払うと、どんどん伸びる。抑えるのではなく、サポート役として見守るのがベストではないかと思っています。
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《相川いずみ》

教育ライター/編集者 相川いずみ

「週刊アスキー」編集部を経て、現在は教育ライターとして、ICT活用、プログラミング、中学受験、育児等をテーマに全国の教育現場で取材・執筆を行う。渋谷区で子ども向けプログラミング教室を主宰するほか、区立中学校でファシリテーターを務める。Google 認定教育者 レベル2(2021年~)。著書に『“toio”であそぶ!まなぶ!ロボットプログラミング』がある。

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