私立高「経済的理由で中退」過去18年間で最低基準
全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)は6月10日、2015年度末までに経済的理由で学費滞納・退学した生徒の調査結果を発表した。経済的理由で中退した私立高校生の割合は0.02%で昨年度から半減し、過去18年間の調査でもっとも少ない結果となった。
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
全国私教連は、2016年3月末現在、2015年度1年間の中途退学と3か月以上の学費滞納状況を調べた。調査は1998年から毎年行っており、今回で18年目になる。34都道府県の私立高校303校・全国の私立高校生徒の25.1%にあたる260,542人と、24都府県の私立中学校133校・全国の私立中学生徒の21.8%にあたる52,970人からの回答をもとに集計した。
2015年度の1年間に経済的理由で中退した私立高校生は47人で、中退率は0.02%。2014年度が101人だったのに対し、半減した結果になった。もっとも多かったリーマンショックの起きた2008年の513人と比較すると10分の1に減少した。また、経済的理由で中退した生徒のいる学校数は16都府県31校で、1校平均1.5人おり、中退者が学校によって偏りがある傾向が続いている。経済的理由で中退した私立中学生は、8校8人おり、中退率は0.02%でこの4年間で大きな変化はなかった。
2016年3月末で3か月以上の学費を滞納した私立高校生は、131校786人いた。昨年度の人数から微増したものの、滞納率は調査開始以来最低の0.30%となり、2013年度以降の調査から過半数の学校で滞納生徒がいない状況が続いている。
また、2017年度に文部科学省や国会で現在の就学支援金制度の見直しが検討されることから、優先される課題について聞いたところ、3割以上が「所得制限をなくし、全員に給付してほしい」と回答した。そのほか、「授業料だけでなく施設設備費も就学支援金の対象にしてほしい」「低所得層への加算額を増やしてほしい」などがあった。
全国私教連は、今回の調査で経済的理由によって中退した私立高校生が過去最低となった理由として、国と自治体の支援制度の拡充を挙げている。2014年度に低所得層への加算と奨学のための給付金の制度が見直されたほか、自治体単独の減免制度も拡充し保護者負担が大きく減少したからと分析している。
現在、35道府県で授業料無償化が進んでいるが、私立高校は授業料以外に施設設備費と入学金が必要になる。施設設備費まで支援対象としているのは13道府県、入学金補助制度は18県にとどまり、自治体格差が拡大している。
経済的理由で中退した生徒の3分の1にあたる14人が退学した東京都は、補助対象が授業料に限定しており、新入生だと生活保護世帯で年額46万円、非課税世帯で51万円の自己負担となる。隣の埼玉県では、入学金補助のほか、生活保護世帯や非課税世帯では授業料と施設設備費が全額補助され入学金の差額(12万7,000円)のみが自己負担になり、東京都との差は生活保護世帯で3.6倍、非課税世帯で4倍になる。
今後、全国私教連は「就学支援金の所得制限を撤廃し、支給対象を全世帯にすること」「国による入学金補助制度を創設すること」など、お金の心配をしないで学校選択できるよう関係機関に改善を求めていくとしている。
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