塾なしでハーバード現役合格…廣津留真理さんに聞く「世界に通用する一流の育て方」

 公立で塾なし。通算の学費50万円でハーバード大学に合格。「世界に通用する一流の育て方 地方公立校から〈塾なしで〉ハーバードに現役合格」の著者である廣津留真理さんに聞いたい。

教育・受験 高校生
インタビューに答える廣津留真理さん(撮影:市原達也)
インタビューに答える廣津留真理さん(撮影:市原達也) 全 3 枚 拡大写真
◆“共有”の場…Summer in Japanの活動とは

 廣津留さんは、既存の価値観に疑問をもつこと、そして自分の考えを相手と共有することの重要性を繰り返し子どもに伝えてきたという。だが今の日本では、“共有”することが難しいと嘆く。「子どもたちは、試験のための知識を自分の中に溜め込むばかりで、その知識やアイデアを社会で共有して、それがどう社会に役立つかを考えたり、発揮したりする場がないのはとても残念です。」

 だから、伝える力、プレゼン力が育たない。グローバル時代を生き抜くためには、プレゼン力、つまり結論を先に述べて理由を後付けにするという逆三角形の思考法を学ぶ場が必要だと訴える。

 AI(人工知能)の進歩は目覚ましい。つまり、これからの世界で真に求められる力は、何を知っているかではないのだ。廣津留さんは日本の子どもたちにも「共有できる場」を作ろうと、2012年の夏からSummer in Japanという活動を始めた。夏休みに地元・大分へハーバード生を無償で招待し、日本の子どもたちに7日間、英語を教えてもらう。英検3級以上なら7歳から参加可能で、子どもたちが英語を道具として自己発信力を高めるのが狙いだ。ハーバード生が7歳児に科学論文やプレゼンテーションの方法を教えるワークショップは世界的にも珍しく、日本各地のみならず、海外からの参加者も多い。2014年度には経済産業省主催の「第5回キャリア教育アワード」奨励賞を受賞している。

 この試みには、廣津留さんのもう一つの思いがある。

 「家庭環境が子どもの将来を決めてしまうようなことがあれば、その社会は幸福ではありません。日本の地方に育ち、家庭の文化資本が高くなくても、高額な海外留学ができなくても、ここに来ればハーバード生に出会え、新しい学びがあり、その子の人生が大きく変わるかもしれない。そんな子が1人、2人と増えていくお手伝いができればいいなと思っています。」

◆親はすでに時代遅れ

 娘のすみれさんは今年の9月、音楽の世界的名門校であるジュリアード音楽院(ニューヨーク)の修士課程に進学した。その後については、得意の音楽と英語を活かした仕事に就きたいと思いつつ、まだ明確には決めていないそうだ。

 「ハーバードの学生は、卒業後はとりあえずあてもなく旅に出るとか、音楽や芝居、映画製作などやりたかったことをやるという感じで、生き方に余裕があります。一方で日本は、今もなお、就職を最終ゴールと捉え、親の成功体験に子どもが縛られている感じがしますね。特に昨今は、子どもが歩いている先に次々と橋を作っていくような保守的な子育てが増えている気がします。」

 未来人から見れば今の親はもはや時代遅れなのに、親が子どもの足かせになっている、と。「私の教育のモットーは、”The best way to predict the future is to invent it.”※です。」
※アラン・ケイ(コンピューターサイエンティスト)の言葉「未来を予測する最善の方法は、未来を発明することである」

 未来を発明するのだ、と明るく微笑む廣津留さんがとても軽やかなのは、彼女には未来しか見えていないから。
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《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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