高校の中退防止、カギは高1の1学期

 国立教育政策研究所は6月7日、高校中退者と非中退者の高校3年間における意識の変容を比較分析した調査報告書を公表。両者間で有意差があった項目などをまとめており、高1の1学期での働きかけが中退防止のポイントとなることなどわかった。

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 国立教育政策研究所は6月7日、高校中退者と非中退者の高校3年間における意識の変容を比較分析した調査報告書を公表。両者間で有意差があった項目などをまとめており、高1の1学期での働きかけが中退防止のポイントとなることなどわかった。

 国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターは、高校中退に関するより詳細な実態を捉えるため、平成23年度にA県公立高校に入学したすべての生徒(1万3,024名)を対象とした調査を実施。高校生活に関する意識や行動を35項目の質問で尋ねる「高校生活調査」を、4月・7月・11月・2月の年4回(高校3年生時の2月を除く)、3年間で計11回行った。質問に対する回答は「よくあてはまる」から「まったくあてはまらない」までの4段階に応じて点数化・集計され、各学年において、年間を通じて有意差の認められた項目について要因を分析した。

 各学年の調査結果をみると、全学年を通じて中退者と非中退者の間に有意差の認められた項目は、「まじめに授業を受けている」「学校行事に熱心に参加している」の2項目。この2項目を含め、各学年で有意差の認められた項目は、高1段階が「授業がよくわかる」「高校に行くのが楽しい」「充実した高校生活が送れそうだ」など7項目。高2段階は「好きな授業がある」「部活動に熱心に参加している」「友達に好かれている」「自分にはよいところがある」など14項目。高3段階では「気持ちがむしゃくしゃする」「身体がだるい」「今の自分が好きだ」など7項目となっている。

 各学年における特徴の比較を分析したところ、高1中退者は4月の時点から7月にかけて、有意差の認められた7項目すべての平均値が大きく下降している。一方で、高2・3の中退者の平均値は、年間を通して大きな変化はみられなかったことから、高校1年生の1学期間の働きかけがポイントだという知見を示した。特に「授業がよくわかる」に関して、高1中退者は高2・3中退者より大きく減少しており、授業がわかることは高1での中退の歯止めになる可能性が高いとしている。

 また、有意差のあった項目で否定的回答が多くなると中退に至る可能性が高くなると考えられるため、これらの項目について各学期程度の頻度で定期的に把握することが大切だという。全学年で有意差のあった「まじめに授業を受けている」「学校行事に熱心に参加している」の改善は、どの学年、どの学期においても高校中退の防止に結びつくとした。

 「高校中退調査報告書~中退者と非中退者の比較から見えてきたもの~」は、国立教育政策研究所Webサイトから閲覧できる。国立教育政策研究所では、この報告書を各地域において、高校中退の未然防止の在り方を検討するための基礎資料としてほしいと述べている。

《黄金崎綾乃》

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