子どもの前向きな将来像、カギは「居場所の多さ」

 自分の居場所と感じる場が多い若者の方が、生活の充実度が高く、前向きな将来像を描く傾向にあることが、内閣府「平成29年版 子供・若者白書(旧青少年白書)」からわかった。

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内閣府「平成29年版子ども・若者白書」/居場所の有無
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 自分の居場所と感じる場が多い若者の方が、生活の充実度が高く、前向きな将来像を描く傾向にあることが、内閣府「平成29年版 子供・若者白書(旧青少年白書)」からわかった。自分の居場所では、「自分の部屋」「家庭」に続き「インターネット空間」を居場所に感じる割合が高い。

 「子供・若者白書」は、子ども・若者育成支援推進法に基づく年次報告書として、平成22年(2010年)から作成され、毎年国会への報告が行われている。平成29年版では、平成28年度を中心とする子ども・若者の状況および子ども・若者育成支援施策の実施状況について、「子ども・若者育成支援推進大綱」(平成28年2月9日子ども・若者育成支援推進本部決定)の構成に沿って紹介。「子ども・若者育成支援施策の総合的な推進」「困難を有する子ども・若者やその家族の支援」「創造的な未来を切り拓く子ども・若者の応援」など第1章~第7章の特集から構成されている。

 特集「若者にとっての人とのつながり」では、平成28年度に内閣府が行った「子ども・若者の意識に関する調査」の結果をもとに、若者のつながりに関する現状とそこから見える課題を考察した。調査は平成28年12月、全国の15歳~29歳の男女6,000名を対象に行った。

◆学校よりも自分の部屋

 居場所の状況の調査では、「自分の部屋」「家庭(実家や親族の家を含む)」「学校」「職場(就業経験者のみ回答)」「地域(現在住んでいる場所やそこにある施設など)」「インターネット空間」の6つの場所から、それぞれ自分の居場所だと感じているかどうかを聞いた。「そう思う」「どちらかといえばそう思う」が高い割合となったのは、「自分の部屋」89.0%、「家庭」79.9%、「インターネット空間」62.1%で、「学校」「職場」「地域」を上回る結果となった。

 それぞれの場の人とのつながりの強さでは、「家族・親族」「学校で出会った友人」との間に、楽しく話したり、悩みを相談したり、本音を言ったりするなど、つながりの強さを感じている若者の割合が大きい一方で、「地域の人」「インターネット上の人」との間のつながりは弱いと感じている若者が多かった。「職場・アルバイト関係の人」については、地域やインターネット上の人に比べると、楽しく話せる、困った時は助けてくれると感じている傾向にあった。

◆居場所は多いほうが充実度アップ

 また、居場所と感じている場の数と生活の充実度は相関関係にあり、居場所1つでは充実度は36.4%だったが、3つでは61.2%、6つでは89.9%。そのほか、学校や地域の人とのつながりにおいて、「何でも悩みを相談できる人がいる」と感じている回答者の方が、いないと感じている回答者より充実度が高かった。

 自己の将来像(10年後)とも関係しており、居場所の数が多くなるにつれ、生活の自立や社会への貢献、対人関係などについて前向きな将来像を描く傾向の回答割合が高くなっている。居場所6つの回答者では、76.5%が「自分の収入で暮らせる仕事についている」としたのに対し、1つでは36.1%、3つでは52.4%と差が見られた。

 居場所であると感じている場が多い方が、暮らし向きがよい傾向にある。就学や就業とも関係があり、自分の居場所を3つ以下と感じている割合は、無業者(求職中を含む)の75.6%がもっとも多い。無業者以外の割合を見ると、学生は36.6%、正規職員(自営業を含む)は42.0%、非正規職員は53.6%、専業主婦(夫)は47.3%となっている。

 若者が社会的な成長を遂げ自立していくうえで大きな影響を与える要素と考えられる「人とのつながりのありよう」。特集では、若者がひとりで問題を抱え込み困難な状態に陥ってしまうことを防ぐためには、普段から家庭のほかにも自分がほっとできる居心地の良い場所を持つこと、何かあった時に支えとなってくれる人との関わりを築いておくことが大切であるとまとめている。「平成29年版子供・若者白書」は、内閣府Webサイトにて公開されている。

《黄金崎綾乃》

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