子育て経験により相手の感情の読み取りが敏感に…京大研究グループ
京都大学は2018年10月24日、「子育て経験により相手の感情の読み取りが敏感になる」とする研究成果を発表した。育児経験者(母親)は成人の表情から感情をより正確に読み取っており、さらに、不安傾向が高い母親ほど乳児や成人の表情をより敏感に知覚しているという。
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
養育者は乳児の表情や声をたよりに乳児の感情を敏感に読み取り、適切な対応をとらなければならないが、それができないと自分を責め、過度に育児ストレスをためこむ人は少なくないという。そこで、教育学研究科 教授の明和政子氏、博士課程学生の松永倫子氏、助教の田中友香理氏らの研究グループは、初産で生後7か月児から10か月児を育児中の母親と出産・育児経験のない同年代の成人女性(非母親)を対象に、乳児および成人の表情から感情を知覚し、読み取る能力にどの程度の個人差がみられるかを検証した。
検証は、無表情から「悲しい」あるいは「嬉しい」表情にいたるまで10段階で変化する画像を乳児・大人の両方の表情で作成し、それらの画像に対して表情が感情を表出していると感じられたか、その場合どんな感情であったか(悲しいまたは嬉しい)の2つの問いに回答してもらう方法で実施。また、養育者の個人特性との関連を調べるため、不安傾向を評価する「StateTrait Anxiety Inventory(STAI)日本語版」質問紙に回答してもらった。
検証の結果、母親は非母親よりも成人の表情から感情をより正確に読み取っていることがわかった。ただし、自分の子ではない乳児の表情に対する敏感性および正確性については同様の結果は得られなかった。さらに、母親の表情知覚の敏感性には一定の個人差があり、不安傾向が高いと評価された母親ほど乳児や成人の表情をより敏感に知覚していることがわかった。これらの結果は、養育経験の蓄積や不安傾向の個人差によって、相手の表情を知覚したり、そこから感情を読み取ったりする能力が柔軟に変化することを示しているという。
研究グループは、「今後もヒトの育ちにまつわる基礎研究を進め、現代社会が喫緊に取り組むべき課題である、産後うつや育児ストレスの本質的な理解とそれにもとづく有効な支援法を提言していきます」とコメントしている。
今回の研究成果は2018年10月24日、米国の国際学術誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載された。
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