おおたとしまさ×イモニイ×松島伸浩が熱論「幸せな中学受験」

 2019年5月21日、教育ジャーナリストおおたとしまさ氏の「いま、ここで輝く。超進学校を飛び出したカリスマ教師イモニイと奇跡の教室」出版記念トークセッションが開催された。ゲストはイモニイこと栄光学園の井本陽久先生と、花まるグループ スクールFC代表の松島伸浩氏。

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おおた氏からは熱いメッセージ
おおた氏からは熱いメッセージ 全 9 枚 拡大写真
 2019年5月21日、教育ジャーナリストおおたとしまさ氏による「いま、ここで輝く。超進学校を飛び出したカリスマ教師イモニイと奇跡の教室」(エッセンシャル出版社)の刊行にともない、お茶の水エデュケーションプラザ(EDUPLA)にて出版記念トークセッションが開催された。

 この書籍の主人公である“イモニイ”こと「いもいも」教室主宰、栄光学園教員の井本陽久先生と、花まるグループで幸せな受験を応援するスクールFC代表の松島伸浩氏をゲストに迎え、「中学受験」における保護者の関わり方を中心に、講演とトークセッションが繰り広げられた。

トークセッションは3部構成で実施されたトークセッションは3部構成で実施された


「イモニイ」とは何者なのか?



 神奈川の名門、栄光学園中学高等学校に「イモニイ」と呼ばれる数学教師がいる。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏の新著は、このイモニイに密着したルポルタージュだ。

 イモニイの授業には、数多くの教員やプロの家庭教師が見学に来て、その生徒のいきいきとした躍動感に驚くという。そして新著には、その背景が詳細とともに綴られている。

 「イモニイという素晴らしい先生が栄光学園にいる。ほかの学校にもやはり素敵な先生はいるが、そうした先生がいる学校に入学しさえすればOKなのか? そのために、中学受験で夜中2時3時まで勉強させて、何が何でも偏差値を上げて入試に受かりさえすれば、人生は本当にバラ色なのか?」(おおた氏による当イベント冒頭の挨拶)

 そもそも“中学受験のおよそ3年間や中高6年間で子どもが得られること”の本質的な意味とは何なのだろうか? 親にできることは何か? イモニイがやっていることとは?

 出版記念トークセッションのようすをレポートする。

幸せな中学受験を目指すということ



 第1部は「わが子の中学受験をより豊かにするために」をテーマとした松島氏による講演。松島氏は、花まるグループのスクールFCの代表で、中学受験に30年以上携わってきた。イモニイとは花まる学習会を通じて知り合いになったという。

 まず松島氏は、中学受験は選択の受験だという。

 「首都圏ではおよそ20%の受験率。5人に1人が中学受験をしているといわれています。でも4人は高校受験あるいはほかの道に進むんです。要は、受験をするしないは自分たちが選ぶことなのです。(中学受験をするならば)意味のある受験をしてほしいと思っています。」

 松島氏が代表を務めるスクールFCは“自学ができる子を育てる”ことを指導の柱にしている。中学受験を通じて主体的に学び、自分で考えることが好きになれば、その先の将来にも役に立つと言う。

 「中学受験はゴールではありません。ご家庭にとって幸せな受験とは何かを、受験がはじまる前にしっかりと話し合ってもらいたいんです。そうすれば、何かあったときに、そこに立ち返って受験する意味を話し合えます。また、わが子の将来を考えるときに、途中でやめることも幸せな受験のひとつといえるかもしれません。」

中学受験の落とし穴とは



 続いて松島氏からは“中学受験の落とし穴”について、実体験に基づく具体的な指摘があった。「塾の成績を上げることだけに関心を置いてしまう」「子ども不在で親主導の勉強になってしまう」「より早くより高くより多くは正しくないこともある」「親が勉強に関わるなら正しいやり方にこだわらない」「偏差値が高ければ高いほどいいわけではない」「宿題が多ければ多いほどいいわけではない」など、中学受験で親子が陥りがちな過ちが次々と紹介された。

 特に印象的だったのは、基礎・基本と応用力の関係。

 「私は、応用問題に早くから取り組ませたほうが、応用力がつくかというと、そうではないと思っています。まず使える道具がなければ家は建てられない。道具というのは基礎・基本の部分です。常にその道具を磨き、使い慣れている状態であるかが大切です。基礎・基本の習得には遊びの要素がとても大事で、遊びの要素を入れてやると、子どもたちは基礎・基本を自然に身に付けていく。それを無理やり暗記しなさい、覚えなさいってやらせるのは、すごい苦行になってしまいます。」

スクールFCで採用されているノート法の紹介スクールFCで採用されているノート法の紹介

 花まる学習会の真髄は、ゲーム性を重んじた「遊んでいるかのように学ぶ」授業だという。これは多くの保護者や教育関係者も実感できるものだろう。そして応用力へと話は広がる。

 「応用力とは、基礎・基本がしっかりあった上で試行錯誤を繰り返した結果でしか伸びない力です。これは井本先生もおっしゃっていますが、失敗していきながら、自分の中で、これどうしてこうなんだろうと試行錯誤を繰り返していく中でしか、実は応用力はつかなくて、自分でしか伸ばせないものなんです。」

幸せな受験のための親の関わり方



 さらに松島氏からは中学受験における親の関わり方のアドバイスが続く。

 「中学受験は子どもだけではなく、親の成長も大切。だから大いに悩んでください。でも抱え込みすぎない。悩むのは情報量がむちゃくちゃ多いから。ママ友もいろんなことを言います。すると、うちの子はって比較しちゃうんですね。それで、より早くより多くより高くとかに行きたくなる。安心を買いたいんですね。でも、それぞれに受験は違いますから、子どもによってうちはこうなんだという、ひとつの芯を作ることが大切です。」

 「親自身がストレスをためないことと同時に、子どもと一緒に楽しむことも大切です。勉強を教え込むということではなく、一緒に成長しながらがいいと思います。思春期や反抗期もあるので難しいことがありますが、そういうときは塾を上手に利用してほしいと思います。」

 第2部、イモニイこと井本先生による講演「わが子の中学・高校時代をより豊かにするために」へ続く。

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《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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