教育機会確保法の施行から3年、現状と対応の方向性など

 文部科学省は2019年7月2日、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の施行状況に関する議論のとりまとめ」を公表した。施行から3年を迎える教育機会確保法について、現状・課題および対応の方向性をまとめている。

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 文部科学省は2019年7月2日、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の施行状況に関する議論のとりまとめ」を公表した。施行から3年を迎える教育機会確保法について、現状・課題および対応の方向性をまとめている。

 文部科学省では、「不登校に関する調査研究協力者会議」と「フリースクール等に関する検討会議」と「夜間中学設置推進・充実協議会」を2018年12月から開催している。今回公表された議論のとりまとめは、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)の施行から3年を迎える前に、夜間中学などの現状と課題を検証し、総合的な推進方策について検討を行ったもの。6月21日の合同会議においてとりまとめ、7月2日に公表された。

 教育機会確保法の議論をまとめた資料は、「夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等」「不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等について」の2つに関して、それぞれの条文とともに、現状・課題および対応の方向性をまとめている。2016年12月の教育機会確保法の成立以降、学齢期の学校における就学機会が提供されず、その機会の提供を希望する人のため、国はすべての都道府県に少なくとも1つの夜間中学の設置を目指し、設置促進に向けた取組みを推進。既設の夜間中学の教育活動の充実に向けた取組みを拡充してきた。

 全国の夜間中学の設置状況は、2019年度に埼玉県川口市と千葉県松戸市にそれぞれ1校ずつ新設されたことで、全国9都府県27市区に33校となる。 また、徳島県、高知県、茨城県常総市、北海道札幌市などが設置表明や設置検討を表明。設置に向けた機運は高まっているものの、全国の義務教育未修了者は12万8,000人以上いると見られ、この設置状況は不十分とされている。

 今後は、すべての都道府県に夜間中学設置されるよう、引き続き促進するとともに、人口規模や都市機能からすべての指定都市に設置されるよう促す。また、昼間の中学校や進学先となる高校などとの連携により、生徒の学びを充実させる。不登校であった入学希望既卒者は、心のケアが必要とするさまざまな背景を抱えている場合があるため、夜間中学におけるスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置を促進する。

 不登校児童生徒などに対する教育機会の確保等について、小・中学校における不登校児童生徒数は2013年以降5年連続で増加し、2017年度調査では小中合計で14万4,031人となった。不登校になってからの事後的な取組みだけでなく、すべての児童生徒にとって学校が安心感や充実感を得られる場となるような「魅力ある学校づくり」を目指す考え。また、すべての教職員が法や基本方針の趣旨を踏まえた支援を行うことができるよう、民間団体と連携するなどして、多様な教育機会の確保などに資する実践について学ぶための方策を検討するとしている。

 そのほか、全国1,295か所に設置されている教育支援センターの位置付けについて、法令上、明確化することを検討する。ICTを活用した学習機会の提供、訪問型支援、保護者や教職員へのコンサルテーションなど、支援の中核としての教育支援センターの機能強化を図るほか、地域の大学などを含めた関係機関と連携した支援体制の構築を進める。

 また、多様な教育機会の確保のために必要な経済的支援の方策について、現行制度の活用も含め、引き続き検討するという。議論のとりまとめは、文部科学省Webサイトに公開されている。

《黄金崎綾乃》

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