サピックスに聞く【中学受験2020】人気校の傾向と入試本番前の注意点

 中学の入試本番まで残すところあと数か月となった。そこで、最新の中学受験の動向について、SAPIX(サピックス)小学部 教育情報センター本部長の広野雅明氏に聞いた。

教育・受験 小学生
SAPIX小学部 教育情報センター本部長の広野雅明氏
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 1教科入試をはじめとした中学受験の多様化、人気の高い国際バカロレア校の増加など、最新の中学受験の動向について、SAPIX(サピックス)小学部 教育情報センター本部長の広野雅明氏に聞いた。

高大連携のカリキュラムが魅力の附属校



--2020年の中学受験について、首都圏入試の傾向を教えてください。

 現況を一言で表すのは難しいですが、まず大学附属校の人気は依然として続いています

 その理由は大きくわけて2つあり、ひとつは大学受験における早慶や「G MARCH」などの難関私立大学が定員を厳格化し、合格者を非常に絞っていることによるものです。

 もうひとつは、附属校の新校舎建築や、高大連携の強化によるカリキュラムの充実などがあげられます。明治大学付属中野では5年かけて校舎の建て替えを行ったほか、法政大学第二では2016年に共学化し、校舎を全面改築しています。

 高大連携では、外部からはわかりづらい大学の学部学科について学部長自らが説明したり、一部大学では高校生でも大学の授業を受講したり、大学の進学のためのサポートを行ったりするなど、魅力的な内容になっています。

 また、附属校は大学へストレートで行けることも大きな利点ですが、明治大学付属明治のように、高校進学時には英検準二級の一次、大学の推薦基準は英検2級もしくはTOEIC450点以上といった資格が必要な学校もあります。このようにしっかりと中高の勉強をさせる一方で、進学校のような先取り型のカリキュラムではないので、中高時代に興味のある資格をとったり、各種の検定試験を受験したりするなど、さまざまなプログラムを通して学びを深めることができます。

 さらに、学部の優先権はなくなりますが、他大学受験をする制度を取り入れている学校も増えています。将来、進路の選択を変えたいと思ったら、推薦資格をもったまま国公立大学などにチャレンジできるさまざまな制度が、附属校の人気を支えていると思います。

SAPIX小学部 教育情報センター本部長の広野雅明氏

1教科入試や午後入試導入で見直される学校も増加



--大学附属校以外で、近年人気が高まっている学校はどんなところでしょうか。理由とあわせて教えてください。

 人気の高まっている学校の傾向のひとつが、入試日を増やしたことにあります。

 典型的な例が、香蘭女学校です。立教大学への推薦にも大きな枠があり、大井町線と池上線の旗の台駅から近く、環境も緑が多く、勉強面も面倒見のいい非常に良い学校です。

 しかし、これまでは2月1日午前に1回のみの入試だったため、第一志望の子しか受験をしませんでした。説明会への参加も志望順位の高いお子様の保護者だけでした。

 ところが前年度から2月2日午後に2回目の入試を追加したことで、説明会の参加人数が倍増しました。結果として、説明会で学校の良さを知ったうえで、今までとは違う層の子が入学するようになり、第一志望率はやや下がったものの、入学者の学力レベルが上昇しました。

 同じように2020年から湘南白百合が2月1日午後に算数1科入試を始めることで、神奈川の受験パターンが変わってくることも予想されます。

 算数1科入試導入校は、男子校であれば、巣鴨や世田谷学園があります。

 たとえば巣鴨は入試回数を増やし、さらに昨年度から2月1日午後に算数1科の入試を始めました。昔は2月1日に御三家、2日に巣鴨を受けるのが定番でしたが、2日に多くの学校が入ってきたことで、巣鴨受験者は御三家との併願組が少なくなってきました。しかし、1日午後の巣鴨や世田谷学園は結果も早く出ますので、受験生にとっては、巣鴨や世田谷学園の合格の切符をもった状態で、翌日以降の受験をすることは、心理的にも有利になります。

 また、男子はどちらかというと国語が苦手で算数が得意な子が多いので、得意な教科だけで勝負できることも大きなメリットです。しかも1教科で得意教科なら、体力的にも負担が軽くなります。

 学校にとっても、算数1科の受験を行うことで、理系を重視するというイメージも伝わり、幅広い併願者によって受験生の幅が広がります。さらに、算数は他教科に比べると、解き方を丁寧に見たとしても比較的採点しやすい部分が多く、著作権処理などがほぼないので問題がつくりやすいというメリットがあります。

 男子は現在2校だけですが、女子は田園調布、品川女子学院、普連土のほか、算国どちらでも選べる山脇など、多くの女子校や共学校が算数1教科入試を始めており、最近のトレンドになっています。

 入試の流れを変えるのは1教科入試だけではありません。

 2020年であれば、暁星が2月2日午前と3日午後に2回入試になったことで、受験生を集めることが予測されます。このように入試日を変えることで、保護者の目を集めることによって、その学校の良さを知ったうえで受験する受験生が増えていきます。

 数年前までは「新型入試」といわれる学校ごとに特色のある入試が増えましたが、学校ごとに違うことをやっているため、受験者は併願がしづらいという問題点がありました。現在、新型入試よりも、教科を減らし1教科などにした「従来型入試の改良型」が非常に増えています。

英語プログラムが充実した国際バカロレア認定校など



--最近では新たなコースが設定される学校もありますが、注目のコースや、注目の学校を教えてください。

 現在の流行りは「国際バカロレア(IB)」です。IBのプログラムを通して、探究心やグループワークなどのさまざまなスキルを身に付けることができます。学校の先生にとっても負担の大きいシステムですが、先生自身の教育力も高まります。

 IBは従来型の日本における一方通行の授業に比べてみると、実践を重視し考えさせるプログラムになるので指導も大変ですが、確実に学校の力が上がります。そういう意味では、IBを取得している学校は非常に注目が高いです。ただし、その分授業料も高くなっていますので、志望する際はその点を注意する必要があります。

 具体的な学校名をあげていくと、まず開智日本橋です。開智学園が全面的にバックアップし、IB準拠コースと一般のコースの両方を設けています。

 また、昭和女子大は「ダブルディグリープログラム」という海外高校と日本の高校の資格を同時に取得したまま卒業できるプログラムを採用しています。卒業後すぐ海外大学へ行かなくても、在校中の留学経験や資格は、本人にとって大きな財産になります。

 ほかにも、国本女子が来年からカナダとのダブルディグリープログラムを設けます。英語の時間数がとても多いので大変ですが、カナダの先生をお呼びするなど、学校としてはかなり力を入れているようです。

 IBやダブルディグリーは従来の「特進クラス」などとは異なる、いわば学校内に別の学校をつくったようなコースです。月謝も高くなりますが、世界水準のコースで勉強し、海外の先生に直接教わることができます。英語力がつくのは確実ですし、この体験はその後の生活においても、本人にプラスに作用することは間違いありません。

 ほかにも、仙台育英、開智望などもIBコースが始まりますし、ドミニコもインターナショナルコースが設置されます。このような学校が、将来の日本の学校の枠組みを変えるひとつの原動力になる可能性があるかもしれません。

--SAPIXでは「志望校別講座」を開講していますが、それらの学校について、志願の傾向などがあれば教えてください。

 志望校別講座は、必ず固定してコースがあるわけではありません。毎年、校舎ごとに志望校調査を行い、志望者の多いコースを設置するのが原則です。すべての校舎に同じラインアップがあるわけではなく、調査をもとにして、校舎ごとに編成し、比較的傾向の近い学校を中心に構成しています。

 たとえば東京都の練馬校であれば、私立の武蔵が近いので、武蔵の志望者だけでコースをつくることが可能です。また、開成コースでも、大規模校舎では学力別に複数のクラスをつくる場合もあります。自分の校舎に志望校のコースがない場合、似た傾向のコースで勉強するか、単独コースを設置している校舎に日曜だけ受講しに行くことも可能です。

模擬試験の判定を参考に



--どのお子さんも第1志望合格を目指し頑張っていると思いますが、実際のところ、第1志望や第2志望の学校に合格できる子どもは何割くらいなのでしょうか。

 「合格率の高い塾は良い塾だ」というのは疑問に思っています。

 受験というものは、80%の判定が出ている子だけ受験させれば、合格率は上がります。ただし、それが良いかどうかは別問題です。

 可能性がわずかであっても、チャレンジする子もいる。そこで失敗したことが、本人の成長につながる可能性もあります。合格率だけを見て、塾で無理やり志望校を変えさせることが本人にとって本当にいいのかは疑問に思っています。

 だから、「第一志望」といっても、本人の気持ちのうえでは第一志望だけれど、実は保護者にとっては別な学校が第一志望ということもありますので、実際の数え方は難しいものがあります。それが良いかは別として、実力適正な学校を選んでいけば大きな失敗はしません。

 模擬試験の判定は、トータルでみれば80%という値は確実です。ただし、小学生だから結果は絶対ではなく、80%でも不合格の場合もあるし、20%でも合格する場合もあります。

受験に成功するには親の関わり方も



--受験に成功する子どもの性格や行動パターンなど、特徴があれば教えてください。

 まず、人の話をきちんと聞くことができる子。最近は人の話を聞けない子が増えていますが、授業中に先生の話をきちんと聞ける子は学力が高い傾向にあります。さらに、メモがとれることも大切です。話した内容のうち、必要だということをきちんとメモし、その行為によって記憶に裏付けていき、力もついていきます。

 もうひとつは自分に対して厳しい子。子どもは結果をほしがるので、中にはカンニングをしてしまったり、答えをそのまま書き写したりしている子もいます。

 気持ちは良くわかりますが、人の答えや模範解答を書き写しても自分の実力にはなりません。子どもだからある程度は仕方ありませんが、無意味だということを教えなければいけません。自分自身に対して厳しく接し、ひたむきにコツコツと続ける。そういう子が伸びていきます。

 その一方で、前向きであることも大切です。テストはいいときも悪いときもありますが、落ち込む必要はありません。むしろテストが悪かったときに、「なぜ悪かったのか」ということを冷静に見て、「今回はここを失敗した。次からは気をつけよう」と前向きに考えることが必要です。

 特に中学入試はたくさん受けるケースが多いため、1校落ちたぐらいで落ち込んでいたら体がもちません。終わったことは開き直って次の日に備え、気持ちの切り替えができること。前向きで強い子は、受験にも強いです。また、中学入試という性質上、コツコツ努力するというマジメさも非常に重要です。

 ただし、これらの性質や性格は子どもの先天的なものではなく、親の接し方によって後天的に得られるのではないかとも思っています。いつも子どもを追い立てていると、子どもは自衛の手段として、親の前でいい顔しようと考え、ズルをするようになってしまいます。

 日本人は良いところをほめず、悪いところを見つけて矯正しようとする傾向にあります。結果的に、子どもがどんどん委縮してマイナス思考になる。親は答が合っていれば喜ぶので、答だけを求めようとする。けれど、大事なのは「答が合っていること」ではなく、「どうしてそのような解答が出てきたのか」ということです。そのためには、きちんと人の話を聞いたうえで、納得しなければできません。

 親としても難しいことですが、子どもの良いところを評価し、結果だけでなく経過によって評価する。悪かったときは仕方がないと、気持ちをすぐ切り替えて、次のステップに出ることが大切です。

 また、親が過度に干渉すると、子どもは自主的に何もやらなくなります。中学受験の段階では自主的にやる子どもは少数ですから、親がある程度はやらせなければいけないのですが、「親がやらせているけれど、本人が自主的に自分でやっているように感じさせる」ことが肝心です。

--ちなみに低学年の場合、通塾の開始時期はいつごろが良いのでしょうか。

 どこの塾も新4年生となる3年生の2月から、新学年のカリキュラムが始まります。そこからスタートして、6年生の終わりまでの3年間学習することが、一般的なパターンであることは変わっていません。

 通塾開始時期として次に多いのが、4年生の4月からです。ただ、2月からカリキュラムが始まっているので、最初の部分が少し抜けてしまいます。一方で、塾通いや雰囲気に慣れるため、3年生の春や夏期講習から前倒しする例も年々増えています。

 昨今、都市部で児童数が増えていて、定員を超えると教室の募集をいったん止める場合もあるため、早めに入塾する例もあります。たとえばSAPIXの豊洲校舎は大変人気があり、一時期、新1年生の2月しか入れない状況になっていました。現在は移転して募集を再開しましたが、人数は昔の3倍に増えています。

6年生は優先順位を考えてバランス良く学習してほしい



--6年生はこれから入試に向けてラストスパートの時期に入ります。この時期はどのように過ごし、学習を進めていくべきかアドバイスをお願いします。

 いちばん大事なことは、優先順位です。

 この時期、やらなければいけないこと、やりたいことはたくさんあります。時間がないとはいえ、小学生なので過度な無理は禁物です。時間が限られているという前提のなかで、「今、何をやるべきか」ということを、親が見守って優先順位をつけてあげることがとても大事です。

 やるべきことのひとつは、受験予定校の過去の入試問題を解くことです。学校によって、試験時間も違いますし、解答方法も難易度も異なります。これは口で言ってもわからないので、実際にその学校の入試問題を何年分か解くことにより初めて体感できるものです。

 1月に試験の行われる埼玉や千葉で受験をする場合、1月試験校だからといって、決して入試問題がやさしいわけではありません。特に栄東の東大選抜の入試問題などはかなり歯ごたえがあり、実際に入試問題を解いて練習しないとかなり大変です。

 人気の渋谷教育学園幕張も難易度が高く、癖がありますが、合格点を見るとかなり低いのが現実です。もし過去問題を見ず、平均点も知らない状態で初めて受けると、子どもはパニックを起こしてしまいます。一度パニックになったら、その次の教科にも影響が出てきてしまいます。

 つまり、自分の目標とする学校の入試問題をある程度解いておくということは、大事なことのひとつというわけです。

 次に、やっておくべきことは、バランス良く学習することです。

 子どもは苦手教科が気になると、そこにばかり時間を使ってしまいます。苦手教科を今さら集中的にやっても、飛躍的に伸びる可能性は高くありません。

 むしろ、得意教科も点をとらなければいけないので、4教科を受験する学校であれば4教科をバランス良く勉強することがとても大事です。時間がないのであれば、理科や社会は毎日、知識問題だけでも1ページずつやるなど、バランスをくずさないように進めると良いでしょう。

 また、こういう時期だからこそ、授業を大切にしてほしいと思います。

 授業を一生懸命聞いて、家に帰って復習するのではなくその場で理解することです。先ほどの「きちんと話を聞いてメモをとる」だけで、十分力を付けることができます。すべて復習して家でやり直すのではなく、授業のなかでひとつでも多く、先生の話を聞いて理解すること。復習する必要がないぐらい理解しておけば、そこで時間を有効に使うことができるでしょう。

--ありがとうございました。

 受験日が増え、1教科入試などの選択の幅が広がったことで、受験生が新たな学校へ挑戦する機会も増えた。現在は、人気の御三家や大学附属校だけでなく、グローバル教育をうたうIB認定コースなどを設けた学校など、魅力的な学校が揃っている。中高でどのような6年間を過ごしたいか、親子で話し合って悔いのないように決めてほしい。

 6年生は受験まであと2月あまりとなったが、ラストスパートに向けた頑張りを応援したい。

《相川いずみ》

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