【中学受験2021】受験者数は昨年に引き続き増える傾向…四谷大塚

 コロナ禍の2021年度中学入試。例年とは異なる状況下での受験となる今年、志願傾向や今年度注目すべき点、人気校の動向などについて、四谷大塚 情報本部本部長 中学情報部の岩崎隆義氏に話を聞いた。

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 コロナ禍の2021年度中学入試。例年とは異なる状況下での受験となる今年、志願傾向や今年度注目すべき点、人気校の動向などについて、四谷大塚 情報本部本部長 中学情報部の岩崎隆義氏に話を聞いた。

受験者数は引き続き増加傾向



--今年の春(2020年度入試)の志願傾向などに特徴があれば教えてください。

 1都3県の6年生の数は減りつつありますが、中学受験に臨む総数・受験率ともにピークを迎えています。今年(2020年)10月の合不合判定テストを終えた時点で去年よりも受験者数は増加しているので、2021年度入試についても昨年に引き続き増える傾向にあるでしょう。

 中学受験がブームになった背景として、かつては大学への現役合格率において私立の方が公立よりも優位という考え方でしたが、今は、思春期の多感な時期を、中高一貫教育で6年間かけて過ごすことの教育効果が高いという認知が進んだことが大きいでしょう。白鳳、両国といった併設型の都立校、本郷、豊島岡などの私立で高校募集をやめるなど、高校からの募集を停止する学校が増えている理由にもつながります。

四谷大塚 情報本部本部長 中学情報部の岩崎隆義氏
四谷大塚 情報本部本部長 中学情報部の岩崎隆義氏

--少子化もあり、教育に投資する家庭が増えたことも背景にあるのでしょうか。

 先行き不透明な時代といわれ、AIが台頭し、昔と今では1年間の技術発展のスピードも違います。10年後を予測するのが難しい時代だからこそ、親として子どもに与えなければならないのは教育であるという保護者が増え、我が子にとって最上の教育環境を選び、付加価値をつけて巣立ってほしいという期待を込めて、中高一貫校が選ばれているのだと思います。

 大学入試改革は現在足踏み状態ですが、「いろいろな人々と協働して、主体的に学ぶ態度をもつ18歳に来てほしい」という、大学側が求めていることは変わっていません。18歳の時点でどんなことに興味があって、どんな夢や志があるのか、それを実現するために大学でどんなことを学びたいのか。なぜそういう考え方になったのかというところを突き詰めると、中高6年間の間にどんな学びや経験をしてきたかという「学習歴」が重要だという考え方に、自ずと繋がってくるのです。

--附属校の人気は依然として高いのでしょうか。

 私立大学の定員厳格化にともない大学附属校が人気に、という考えは少々短絡的なのではと私は思っています。それよりも、目先にとらわれることなく、e-ポートフォリオに代表されるようアクティブラーニングや探求型の学びを実践し成果をあげてきた大学附属校の良さが、再認識されたのではないかと考えています。

コロナ休校で私学の強みが再認識された



--今年のコロナ禍は、今後の中学受験に歯止めをかけるのか、拍車をかけるのか。どのようにお考えでしょうか。

 リーマンショックでは受験者数が減りましたが、コロナ禍で下がるかというのは疑問です。というのも休校期間中、公立校に比べて私学は迅速にICT化を進めるところが多かったですよね。1人1台タブレットを与え、Wi-Fi設備を工面するなど、先生方は苦労されたと思いますが、OBなどの人脈を駆使しながらも体制を整えていました。

 動画配信や双方向授業、制約があるなかでオンライン説明会を実施したり、在校生の4、5月の取組みについてホームページで公表したり、いち早く情報発信もしていました。コロナを契機に私学の対応の良さが改めて再認識された側面は大いにあると思います。

 これまでずっと勉強をしてきた6年生はコロナだからといって離脱することなく受験すると思いますが、5年生以下の保護者に至っても、コロナ渦中における私学のスピーディーな対応を知り、公立ではなく私学への進学を考える家庭は今後も増えるのではないでしょうか。

人気校は昔から変動せず



--近年人気が高まっている学校がありましたら教えてください。

 目先の人気や志望数の増減ではないところでみると、やはり昔から憧れられている学校の人気はそのまま継続しています。今年の6年生の志望先について去年の同時期と比較したデータがありますが、男子でいえば早稲田実業、浅野、開成、武蔵、早大学院、海城、明大中野付属、麻布、本郷が人気ベスト10。ほかに駒場東邦なども人気がありますね。

 女子校では鴎友、吉祥女子、女子学院、豊島岡、青山学院、桜陰、香蘭女学院、共立女子、中大横浜、学習院女子。大学附属校も多いですが、先にも述べたように、入学者定員厳格化の前から人気の学校として入っています。高大連携で注目されましたが、大学附属校も探求的な学びを実践していますし、伝統校・人気校もいろいろ改革をしています。

--今年の注目校を教えてください。

 ブレイクしそうなのは昭和女子大附属です。大学でかなりグローバル化を推進し、就職率がよくなったというのもあり、その実績が中学受験にも浸透してきています。ただ、グローバル留学コースについては、海外の姉妹校や提携大学とオンラインでの取組みはしているものの、当初予定していたリアルな留学がコロナ禍で制約を受けています。同じように、グローバル教育を柱とする学校についても今年は何らかの影響が出ていると考えられます。

 豊洲の校舎が人気の芝浦工業大学も、満を持して中学から共学化し、必然的に男子の難易度もあがっていくでしょう。村田女子学園から生まれ変わった広尾学園小石川も、広尾学園と同じ教育を標榜しているとあって人気が高まるのではと予想されています。

--注目のコースについてはどうでしょうか。

 通常のクラス編成では早いと高1、一般的に高3で理系・文系に分かれるのが基本ですが、それを中1まで前倒しているのがコース制のイメージです。

 かつては、栄東の東大選抜クラスや、都市大付属のI類、II類といったように、一般クラスと難関クラスを分けるコース制がメインでしたが、近年は留学をするためのクラスや英語に特化したグローバルコース、医進サイエンスなど専門分野に特化したコースなど、設置コースも多様化しています。入学して実際に勉強を進めるなかで、合わないと感じたらコースを変えることもできるので、行きたい学校のコースが希望に沿うものかどうか検討してみてもいいでしょう。

午後入試を組み込んだ併願作戦



--志望校の傾向、併願傾向にも変化はあるのでしょうか。

 今年の顕著な傾向として、95%以上の学校で窓口からインターネット出願に切り替わっています。入試日の前日まで出願を受け付けている学校もあり、2月の1日、2日の合否や出願状況、倍率をギリギリまでみて、3日、4日にチャレンジする学校を検討するということも可能になるでしょう。

 また、午後入試のニーズが高まっています。2月1日、2日の午前中は第一志望を受け、午後も受験するという併願パターンを組む受験生が増えています。1日午後に入試がある巣鴨、世田谷学園、獨協、2日の午後入試を開始した香蘭などに注目が高まり、特に1教科で試験が済む算数一科の入試はかなり高い倍率になっています。

 私どもが考える併願のポイントとしては、まずは千葉・埼玉の学校を受けて1月中に1つでも合格を取ること。それが長い入試に立ち向かう原動力になります。合格が1つでもあるのとないのとでは、心の余裕がまったく違います。合格があれば勢いに乗れますが、不合格が続いた場合は12歳のメンタルを考えたら耐えられませんよね。

 実際、千葉・埼玉の1月試験校を受験する人は年々増え、栄東、大宮開成などは実際の入学者も埼玉ではなく東京、神奈川の生徒が増えています。江戸川を超えたらすぐ都内という立地の専修大松戸のように、3~4年前に東京都からの受験者が4割を超えた学校もあります。

オンラインにはない価値を再認識



--休校中、四谷大塚さんではオンラインの無料講座を開講するなどさまざまな取組みをされておりましたが、この休校の影響は現在、どのような形で表れているでしょうか。

 四谷大塚では、四谷大塚では、オンライン授業に加えZoomを利用してホームルームを行ったり、定期的に電話をするなどしてコミュニケーションを図り、子どもたちのモチベーションを維持するようにしていました。

 今回の一斉休校で一気にICT化が推進されましたが、これからはどちらも併用していく流れになるでしょうね。学校にしても塾にしても、オンラインにどれだけ対応できたかということが取り沙汰されますが、一方で、リアルでないとできないことがあったのだとの再認識にもつながったのではないかと。制約があったからこそ、当たり前にやっていた日常の価値に気付いた側面もあると思います。

--リアルだからこそできることが浮き彫りになった感じでしょうか。模試なども、オンラインで自宅受験もできますが、やはり気が緩むというのはあるのでしょうか。

 6月28日に行った「全国統一小学生テスト」では、会場試験とオンライン受験を選べたのですが、13対1で会場受験が多かったですね。やはり実際の試験と近い形での模擬試験の重要性を、受験生も身にしみて感じているのだろうと思います。

 隣で鉛筆で書いている音のするリアルな教室で、緊張感をもって厳正実施するためにも、いかに生徒が安心して受けられる環境を提供するかが私どものミッションだと思っています。また、「合不合判定テスト」では会場に中学校を借りて実施することも多いのですが、マスクを装着、検温をクリアしたら消毒をして教室へという流れを徹底しています。その模試の実施のようすを見た会場の学校の先生方からも、入試本番時の対策の参考になるという声をいただくこともあります。

これからの時期は、模試と過去問の活用を



--入試当日まで、受験生はどのような勉強をしていくのがよいでしょうか。

 毎年、この時期はどの受験生も焦ります。ですが、受験生に残っている時間はみんな同じ。だからこそ、いかに使う時間の質をあげるか、時間×集中のかけ方が正しい方向を向いているのかを見定める必要性があると思います。

 具体的には、11月、12月と合不合判定テストが残っていますが、模試で自分の現状をしっかり把握すること。ライバルができていて自分ができていないところがわかるので、弱点をつぶしていくことが大事です。

 また、志望校の出題傾向に則した対策をすることが大切になってくる時期です。入試問題は満点が取れない構成になっていて、時間切れで最後まで解けないというケースが多い。たとえ時間切れだとしても、見直しは必要です。そのため、試験時間をどのように使うか、過去問を解いて時間配分を見極めましょう

 塾でもそういう指導をされると思いますが、試験日が1回しか設定されていないような学校は10~20年分の過去問をやるなど、過去問を使って試験問題を把握し、自分がどう対処するべきかを自覚することが必要でしょう。

試験のたびに子どもは成長する



 もちろん頑張っていても、成果がパッとは出ないこともあります。ですが、2月1日、その日に成果が出ればいいのだと親御さんはそのくらいの気持ちで構えていてください。長年、受験に臨む子どもたちをみていますが、模試の成績が右肩あがりでも下がっていても、当日の入試結果と相関はありません。

 子どもは、試験を受けるたびに伸びるのです。どうしてかというと、試験中は頭をフル回転させているから。それまでひたすらインプットしていたのが、試験の最中にアウトプットに切り替わる。それまでのインプットが試験で通用するかどうかを確かめる機会にもなります。だから模試であれ本番であれ、1回1回の試験に真剣に臨むことが重要なのです。

 1月校を受けて合格しておくことで、心に余裕が生まれると述べましたが、反面、油断してしまうのではという心配もあります。矛盾しているようですが、1月中に受かることと同時に、落ちることも大事な経験なのです。

 試験中は最後の1分1秒まで無駄にするな、見直せと伝えていますが、1点の差で合格か不合格か決まる年もあるという現実を見て、1点の重みを自覚する6年生をたくさん見てきました。保護者の方もこのくらいの時期になると、試験のたびに成長する我が子の姿を実感するはずです。

受かった学校が最良の学校



--最後に、受験日までラストスパートをかける小学6年生と保護者へのアドバイスをお願いします。

 まず前提として「なかなか思うように伸びないですよ」と言っておきたいですね。成績が下がったときには一緒に悔しがるなど、共感するのがモチベーションを維持するうえで大事です。いかに頑張っているかは近くにいる親御さんがわかると思うので、結果が出ていなくても「あなたが頑張っているのをお母さんは知ってるわよ」とポジティブな声がけをして元気づける、前向きで常に笑顔でいることが、合格のための一番の秘策です。

 また、第一志望校はお子さんの意思によるものかもしれませんが、第二、第三志望の学校は親御さんが決めていることも多いです。もちろん第一志望の学校に受かるに越したことはありませんが、第二志望、第三志望の学校に通うことになるかもしれません。

 ですので常日頃から、受験する学校はどこも親が厳選した学校だということを伝え、どの学校に受かったとしてもいいと子どもに伝えてください。進学することになった学校が、我が子とっての最良の学校です。

 今年はコロナもありインフルエンザもありと、体調を整えるのが大変な年ですが、とにかく2月1日に無事に子どもを送り出したら、親のできることは終わり。会場に向かう後ろ姿をみて「今日までよくやってきた」そんな心境になれるような受験を迎えてほしいと心から思います。

--ありがとうございました。

 人事を尽くして天命を待つ。我が子にふさわしい学校は天が決める、そんな気持ちでいてほしいと岩崎氏。どんな学校に行っても自信をもってやっていける子に育てることが、中学受験をめざす親のゴールだということを、改めて感じさせられたインタビューだった。

《吉野清美》

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