コロナ禍で後まわしにされがち?
歯と口のケア
毎年6月4日から6月10日は、厚生労働省、文部科学省、日本歯科医師会、日本学校歯科医会によって「歯と口の健康週間」と定められ、歯と口の健康に関する正しい知識を学び、歯科疾患の予防と健康保持のための活動が推進されていることから、子供が学校から手紙を持ち帰ってきたり、歯磨き指導が行われたり、歯科検診結果が気になるご家庭も多い時期ではないだろうか。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行により子供たちが家で過ごす時間が増えたこの1年、間食の増加や歯科通院の自粛、学校での歯磨き指導の中止や歯科健診の延期・簡略化などが原因で、むし歯のリスクが高まっているという。
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「むし歯」は、その言葉を聞くだけでも歯がうずうずしたり、歯に違和感を感じてしまうほど辛いもの。それが保護者自身ではなく我が子にできてしまったとなると、保護者は「何がいけなかったのか」「なぜ早く気が付いてあげられなかったのか」「歯の磨き方が悪かったのか」など自責の念にとらわれがちだ。宮崎教授による「歯とお口の健康教室」の授業では、子供のころに読んだ絵本を思い出させるかわいいイラストの「むし歯菌」たちがスライドに登場し、保護者世代が子供だったころと変わらない歯と口の健康についての基礎知識を、子供たちと共におさらいする良い機会となった。
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子供たちといっしょに振り返る「むし歯」基礎知識
むし歯はなぜ・いつできる?
むし歯ができる理由は、歯についている糖をむし歯菌が食べると酸を出し、その酸によって歯のカルシウムを溶かしてむし歯をつくってしまうからだ。むし歯菌は甘いものが大好きなので、歯に甘いものがついているとどんどん元気になって増えていく。むし歯は残念ながら自然には治らない。
むし歯の原因となるプラークとは、食べものの残りカスが歯の表面について細菌が繁殖したもので白くネバネバしている。食後8時間程度でプラークができると言われ、プラーク1mgの中には、およそ300種類1億個ものの細菌が存在しているという。「むし歯菌は人間が寝ている間も24時間活動しているので、歯が汚れているまま眠ってしまっても、その間に活動してどんどん糖を食べて元気になって酸を出しているのだ。
磨き方は大丈夫?
映し出されたスライドの中には、学校の歯磨き指導で経験したことがある人も多いと思われる「ピンク色」に染めた歯の写真も登場。むし歯菌が残りやすい歯の溝や、歯と歯の間はむし歯菌が隠れやすいので、むし歯になりやすい。ゴシゴシ強い力で磨くのではなく、150g~200gの軽い力で1本ずつ、磨く順番を決めて磨くのが良い。45度の角度で磨くと良いが、ちょうど良い角度はわかりにくいので、背の低い歯や歯茎の近くは斜め磨き、前歯は歯ブラシの向きを縦にして縦磨きしてみると良いという。
場所によって磨きやすいように歯ブラシの向きを変え、歯ブラシは1か月に1回くらいを目安に交換。歯磨きの時間は長ければ良いわけではなく、しっかりと汚れを落とすことが大切で、磨く歯の順番を決めて、3分くらいを目安に丁寧に磨くことがポイント。歯ブラシを後ろから見てブラシがはみ出して見えるたら交換すると良い時期。1か月もたたないのに毛先が開いてしまうのは力の入れすぎ。歯間ブラシやフロスも毎日できなくても時々使うと良い習慣になる。
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むし歯予防のポイントは?
一番良いのはむし歯にならないこと。そのために必要なむし歯予防のポイントは、食べたら磨く、長い時間をかけてだらだらとお菓子を食べるのはやめる、寝る前はかならず歯磨きをする、たまには歯医者さんに見てもらうこと。むし歯の原因になるのは甘いものだけではないので、家にいる間ゲームしながら、テレビ見ながら長い時間お菓子を食べ続けるのはやめましょうというアドバイスは、コロナ禍で家で過ごすことを余儀なくされている子供たちと保護者自身が特に気を付けたい点だ。
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子供たちの「何も考えていなかったのでもっと歯の健康に気を付けようと思った」「これから生活に役立てていけることばかりだった」という感想からは、放課後の時間を有意義に過ごすことで得た学習意欲や効果を感じることができた。
むし歯は保護者のせい?垂直感染に注意
今回の授業を行った宮崎教授は、予防、詰め物、変色治療が専門領域。大学生に講義を行ったり、研修歯科医師の研修指導、患者の治療、研究論文の執筆等、その活動は教育から臨床、公開講座などの社会貢献まで多岐にわたる。我が子の歯と口の健康のために保護者には何ができるのか、授業後にインタビューに応じてくれた宮崎教授は、保護者は子供の歯と口の健康について過度に心配しているという。
「子供をもつ保護者からは、ご自身がむし歯ができやすい体質なので子供に遺伝してしまったといった話を聞いたり、むし歯になりやすい子供のためにヨーロッパで売られている化学的に歯を丈夫にするタンパク質を入手したいといった相談のお電話をいただいたこともあります。我が子に何か悪いことがあるとすべて自分のせいだと心配する保護者の気持ちはよくわかりますが、むし歯菌は遺伝しません。保護者から子への垂直感染、遺伝ではなく感染なのです。バイオフィルム感染症といって、むし歯菌、つまりストレプトコッカス ミュータンスという細菌に感染しているんです。『感染の窓(window of infectivity)』という時期があるのですが、これは約1歳半から2歳半の間で、もっともむし歯に感染しやすい時期のこと。この時期は母親が子供に食べ物を冷ましてあげたり、味見をしてあげたりして、意図せず口から口へと感染してしまうのです。人と同じでむし歯菌にも個性がありますので、たとえば、栄養があまりなくても酸をたくさん出せる強いむし歯菌を保護者が持っているとすると、その強いむし歯菌が子供にもうつってしまい、むし歯になりやすくなってしまうのです。」
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垂直感染についてよく知らない保護者も多いため、1歳半検診のときに歯と口の健康についての親子教室を開催する機会も多いという宮崎先生は、保護者自身のケアを勧める。「人はやはり怠けてしまうというか、忘れてしまうので、検診に行った後はとても気を付けて歯を磨いたりしますが、だんだんと疎かになりがちです。ですので、出産前には自分自身の歯を治療しておいたり、出産後も、忙しいとは思いますが、定期的に検診に行くことを習慣にしてほしいです。日頃から歯磨きに加え、歯間ブラシやデンタルフロス、フッ化物を配合した歯磨き粉を使うなど複数の予防を続けることがとても大切です。」(宮崎教授)
宮崎教授に聞く、予防習慣が身に付く子育てのポイント
小中学生の予防については次のようにポイントを解説してくれた。
「小学生の低学年ころまでは保護者が手をかけるのでむし歯が悪化しすぎることはあまりありません。むし歯が悪化してから診療にやってくる、という子供は永久歯が生えきって1、2年たった14、15歳が多いようです。小学生の高学年以降は反抗期になったり、受験勉強などで子供自身が忙しくなっていきますよね。そうするとセルフケアが疎かになりがちです。むし歯はむし歯菌が蓄積して進行していった結果、痛くなります。急にむし歯にはなりません。でも磨きなさい、歯ブラシを変えなさいと保護者に言われ続けても行動に移しにくい年ごろです。ですので、さりげなくサポートをしていくことをお勧めします。新しい歯ブラシ良さそうとか、この色の歯間ブラシ良いねなど、さりげなく渡したり、手に取りやすいところに置いてあげたり、子供のようすを見てコミュニケーションをとりながら、お気に入りのものを見つけてあげたりすると良いと思います。」(宮崎教授)
親の背中を見て子は育つという言葉があるように、保護者が磨いている姿を見せるのも大切だと宮崎教授は指摘。そのうえで、「色々なことに気を配らなければならない保護者はとても大変ですが、やはり小学生のうちは手をかけたり、保護者の良い姿を見せると良いでしょう。いろいろなタイプの子供がいますので一概には言えませんが、自分の健康の守り方を見せてあげることは効果的だと思います。子供が心身ともに健康でいるためにも、社会生活の上で必要なコミュニケーションはまず家庭内から大切にしていきたいですね。過度に心配せずに、自分で予防できる子に育ててあげてほしいと思います。子供の自立心を引き立て、支えてあげながら子供の歯とお口の健康をキープしてあげることが保護者の役目ではないでしょうか。」と語った。
心配するよりもしっかりと「予防する習慣」を身に付けてこそ、丈夫な歯をキープできるのだろう。人生100年時代と言われる今、「8020(ハチマルニイマル)運動」という「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動が日本歯科医師会などによって推進されている。自分自身も我が子も、長く自分の歯で噛み、味わうことができるよう、毎日の予防を重ねて「安心」も蓄積していきたい。
モンデリーズ・ジャパンについて
モンデリーズ・ジャパンは約150カ国で親しまれるお菓子会社であるモンデリーズ・インターナショナルの一員です。日本では1960年に事業をスタートし、「オレオ」「リッツ」「クロレッツ」「リカルデント」等、日本の市場で愛されるブランドを送りだしてきました。ガム事業においては国内第2位のポジションを占めています。
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