【中学受験2022】立命館慶祥中の入試講評

 立命館慶祥中学校のSP入試が2022年1月8日、一般入試が1月9日に実施された。リセマムは、練成会グループ四谷大塚NETの協力を得て、SP入試の講評を掲載する。

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立命館慶祥中学校・高等学校
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 立命館慶祥中学校のSP入試が2022年1月8日、一般入試が1月9日に実施された。リセマムは、練成会グループ四谷大塚NETの協力を得て、SP入試の講評を掲載する。

 2022年度立命館慶祥中学校入学試験の出願状況について、SP入試(SPコース)は定員60人に対し、出願者195人(男子95人・女子100人)、合格者65人(男子25人、女子40人)、出願倍率3.25倍、実質倍率3.00倍。一般入試(一貫コース)は定員120人に対し、出願者335人(男子202人・女子133人)、合格者230人(男子145人、女子85人)、出願倍率2.79倍、実質倍率1.46倍だった。

立命館慶祥中学校SP入試 講評
(練成会グループ四谷大塚NET提供)


国語


 大問4題と小問28題で、大問一が知識分野、大問二が説明文、大問三が物語文、大問四が作文という形式は昨年と変わりありません。作文問題で資料の読み取りが例年よりやや難しくなっていること、また昨年度は見られなかった複数の記号を選んで1つの回答欄に記入する問題が2題あり、それが完全解答と考えると平均点はやや低くなることが予想されます。

大問一:知識分野
 漢字の読み書きでは、読みが2題、書きが3題という構成は昨年同様。慣用句・ことわざ、対義語の出題も昨年同様。特に対義語は4年連続出題されているので対策は必須です。知識分野はとりわけ難易度の高いものはありませんが、他の受験生に差をつけられないようにするためにもしっかりと準備が必要です。

大問二
 「日本の科学技術研究の再興(グラフ資料付き)」についての文章。日常で目にすることの少ない言葉が用いられていて難解な文章だと思う受験生もいたかもしれませんが、注釈が多く、それを頼りに読み進めると内容を捉えられます。問一の長文記述は、参照すべき場所を見つけることは容易です。ただし、単純に文をつなげるのではなく、必要な要素を精査したうえで、指定語句を用いながら解答を作成することが求められました。問四は2つのグラフ資料を分析する問題です。この特徴的な資料が付随する説明文は、経験の少なさから難しく感じる可能性はありますが、それぞれの選択肢がどの数値を比較しているのかを確認し、丁寧に読めば解ける問題です。

大問三
 陸上のリレーメンバーの少年が、他のメンバーと言い争う中で自らの本心に気づいていく場面を描いた作品。心情を問う問題は2題あり、傍線部周辺を読むことで容易に解くことができます。また理由を問う長文記述が2題ありましたが、設問中に解答の条件が記されていて、解答に盛り込む内容は絞りやすかったはずです。記号選択の問題は選択肢の文が長めで、まぎらわしい選択肢もあるものの、文章内容と丁寧な対照を行うことで正解にたどりつけます。

大問四:作文
 解答の条件は例年と同じです。今年のテーマは「ジェンダーの意識変革」。3つの資料から読み取れることを条件にしたがって文章を書くという問題でした。条件を見落としてしまうこともあるので、過去問を使いながら練習することが必要です。

<合格に向けてのポイント>
 総じて形式の他、問題数、解答に必要な字数等昨年とほぼ同じで、大きな変化は見られません。長文記述も作文も本文中にある内容を条件にしたがって書く問題で、要約する力や表現する力は必要ありません。そのかわり文章や資料を読み、内容を正確に把握する力が問われます。普段から速く、丁寧に、正確に読むことを意識して練習を重ねていくことが必要です。

算数


 大問4問、小問18題で、例年と比較して問題量に大きな変化はありませんでした。極端に難しい問題はありませんでしたが、易しい問題も少なく、ある程度の算数の力がなければ、得点しにくい問題といえます。立命館慶祥のSPコース合格を目指すなら、中学受験向けの標準的なテキストを使用し、頻出のパターンをまんべんなく理解しておく必要があります。

大問I:計算問題・数量分野の小問集合
 計算問題は2題、平易な問題でした。文章題は3題。「整数」「割合」「売買損益」に関する問題で、標準的な出題でした。確実に得点しなければならないところです。

大問II:図形分野の小問集合
 「円に内接する三角形の角度問題」「辺の比を使う三角形の面積」「水の体積」、基本的な問題でした。立命館慶祥で非常によく出る三角定規(30度・60度・90度)の問題が今年も出題されました。体積は、標準的な出題でした。例年、春頃に学校から公表される設問別の平均点を見ると、もっとも差がついているのがこの大問IIです。図形に関する問題は時間をかけてしっかり対策を講じましょう。

大問III:速さ
 速さと時間のグラフを読み取り、距離を時間とのグラフを書かせる問題が出題されました。グラフを書かせる問題はここ数年、毎年出題されています。また、グラフを使って解く問題も出題されました。速さが変わったり、休憩があったりと、条件を整理して考える必要がありました。ダイヤグラムの特徴を捉え、対策をしましょう。

大問IV:規則性の問題
 ここ数年、連続して出題されているタツオさんとケイコさんの会話形式の問題です。会話文のため問題が長文になりますが、難しいことが書かれているわけではないので、しっかり読んで取り組みましょう。

 今年は粘土と竹ひごを使い、方体をたくさんつなげるという問題でした。数が少ない場合を考えて規則性を見つけ、それを発展させていくという問題形式になっています。2通りの考え方を導き、式に示すという出題があり、いろいろな角度から考えることが求められました。

 全体的に、超難問はなく、取り組みやすい問題になったといえます。解法のパターンを使うというより、きちんと筋道を立てて考えていくと正解できる問題が多くなりました。

<合格に向けてのポイント>
(1)計算力の強化
 大問Iの計算問題に限らず、正確な計算力がなければ正解できない問題もあります。日々の練習が必要です。
(2)グラフを書く・読み取る
 グラフから数値を読み取る力、グラフを書く力が必要です。過去問演習等を通じてグラフの問題に多く触れ、対策を立てておきましょう。
(3)図形の経験値を増やす
 図形分野は正三角形や三角定規を含む平面図形や立体の体積を求める問題を数多く練習し、なぜそうなるのかを理解しておきましょう。

理科


 大問4問・小問28題は例年通りです。今年で実施4年目となるSP入試でしたが、大問Iの小問集合・大問II~IVの実験に関する問題/文章を読んで答える問題という構成は4年間を通して共通で、見慣れた形式に安心感を持って取り組めた受験生も多かったことと思われます。一方、その出題内容は、小数の割り算を含む計算問題や複数の表に示されるデータを関連づけて分析させる問題といった思考力・読解力を要する問題も一定の割合を占めており、40分という限りある時間をどのように使ったかで大きく差が付きそうです。

大問I:小問集合
 物理・化学・生物・地学の4分野から1テーマずつ、それぞれ2題(合計8題)という形式は、昨年同様です。物理は音の速さ、化学は水溶液の同定、生物はヒトの肺、地学は星座早見の使い方についての問題でした。どれも中学受験に向けた勉強を重ねていれば目にすることのある定番の問題で、普段の学習の成果が点数に直結したと言えそうです。

大問II:気象の観測
 地学分野から、湿度の計算に関する問題です。湿度の定義や「露点」「飽和水蒸気量」といった言葉は中学校で学習する内容ですが、丁寧なリード文があり小学生でも解答ができるように配慮されています。湿度の計算には小数の割り算がつきもので、時間を使ってしまうことになるため注意が必要です。今回も小数の計算が必要な問題が6題中3題を占めていました。計算の工夫をすることで筆算をしなくても答えを出せるか、正確な数値が出なくてもおよその数字で正答を導き出せるという絶妙な出題でした。手元の作業に飲み込まれるのではなく、冷静に問題に取り組む力が求められました。

大問III:物の運動
 レールの上を転がる小球について、スタート時の高さやジャンプ直前の速さと飛距離の関係を答えさせる問題です。実験データで「小球がある区間を移動するのにかかった時間」が示され、問題では「小球の速さ」が問われる等、数値の意味を正確に理解することが必要でした。また、実験は3回に分けて行われたという設定だったため、データは3つの表に分かれており、それらを関連づける高度な読解力とデータを処理する力も問われました。

大問IV:環境問題と食物連鎖
 最後の大問は、3年連続で生物分野に関する文章読解でした。石油の精製、ガスの性質の違い等、文章と図で示されたヒントを読み取って答える必要がありました。また、2021年のノーベル賞に関連する問題もありましたが、問われたのは「温室効果ガス」という平易な語句であることから、直近の時事問題対策に右往左往するのではなく、世界的に長らく問題になっていることに目を向けてほしいという学校の出題意図を感じます。

<合格に向けてのポイント>
(1)数の感覚を養う
 今年の大問IIIに代表されるデータを読み取る問題が、毎年出題されています。2021年9月に行われた立命模試でも同様の出題があったことからも、学校は「データを読み取って判断する力」を持った生徒を求めていると言えるでしょう。

 データを読み解くうえでもっとも大切なのは、実験の内容をイメージしたうえで、数の羅列の中に規則性を見出すことです。一定の割合で増減しているのか。正比例・反比例なのか。あるいは二乗に比例しているのか。一見複雑に見える数字ですが、それらが何を意味するのかを常に考えて読み解く練習を重ねましょう。

(2)基礎知識の深い理解
 立命館慶祥の知識問題は、中学受験に向けた勉強をしていれば一度は必ず目にする問題ばかりです。また、小学校の範囲を超えた出題に対しては必ず説明がありますから、中学内容の参考書等に手を出す必要はありません。普段の学習の中で、基本と言われる問題を、確実にできるようにしておくことが大切です。

(3)身の回りのものを科学する
 今年の「ガス警報器」問題や一昨年の「二重窓」問題に代表されるように、誰もが目にしたことのあるものについて、その仕組みや理由を問う問題が見られます。身の回りのさまざまなものに興味を持ち、「どうしてだろう」と自分なりに考えてみることは、理科を学ぶうえで一番大切なことです。授業で学んだ知識を使って、身の回りのものを科学する視点を持つことで、理科という科目を机の上から解放させてみましょう。

社会


 立命館慶祥中SP入試の出題傾向はほぼ例年同様、大問4問・小問27題(うち長文記述1題)の出題でした。分野としては地理・歴史を中心に、国際社会や環境について出題されました。

大問I:地理分野
 おもな農産物をグラフや地図から読み取る問題や伝統工芸品を写真から読み取り場所を選ぶ問題、雨温図、瀬戸内工業地域のグラフを選択する問題等、広く知識を問われるものでした。しかし、基本的知識で対応できるものばかりです。毎年出題される新旧のものを比較する地形図の読み取りも平易でした。

大問II:歴史分野
 出題の特徴も例年通り、各時代のカードから、その時代背景を問う問題でした。平清盛、織田信長など重要人物が行ったことや、明治時代からの戦争史・選挙制度の移り変わりを理解していれば解ける問題でした。ただし、不平等条約改正時期の日本の領土を選ぶ問題や、ヤルタ協定・ポツダム宣言の資料から国名を問う問題では少し差が付きそうです。

大問III:国際社会・環境分野
 国際社会・環境分野を、歴史との融合問題を含めて出題されました。SDGs(持続可能な開発目標)からは「ジェンダー平等」をテーマに、2021年に改正された育児・介護休業法から「どのような変化が起こると考えられるか」という短文記述。また「バイオ燃料が化石燃料と比べて二酸化炭素排出量が削減される理由」を明記する短文記述もありました。女性の社会進出や環境問題のテーマは例年の出題傾向でしたので、予測がついた受験生が多かったのではないでしょうか。東海道新幹線開通と1964年の東京オリンピックを結びつける問題は2021年に実施された東京オリンピックからの時事問題でした。

大問IV:長文記述問題
 今年は「荷物の配送における現状の問題点2つ」と「ドローンで荷物を配送するメリット2つ」を200字以上で明記する、というテーマでした。資料1~4を読み取り、指定語句の条件から「何を書くべきか」に気づくこと、が問われます。書くべき要素を順序立てて記述する文章構築力も問われ、かつ40分という試験時間から、時間配分にも気をつけなければなりません。長文記述に10分程度確保できるよう、過去問演習等を通じた事前の訓練は必須です。

<合格に向けてのポイント>
 総じて、資料からの読み取りが多く、単なる一問一答形式の暗記では対策不足です。さまざまな出題の切り口を学べるように、演習量を増やすことも意識して、学習をすることをおすすめします。

協力:練成会グループ四谷大塚NET

 練成会グループ四谷大塚NETでは、2022年度の北海道内中学入試データや実績を報告する「道内入試総括」を2月13日に四谷大塚NET北海道本部校で実施する。開催時間は午前の部が10時~12時、午後の部が1時~3時。対象は中学受験を検討している保護者、定員は午前・午後の部ともに各80人。申込みは、1月22日午前9時よりWebサイトにて受け付ける。

《工藤めぐみ》

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