ルーズリーフケースの地味な進化~もう「あの袋め!」とは言わせない~

 画期的な新機能や華々しさはないけれど、地味に進化している定番文具をとりあげるこのコラム。前回のキャンパスノートに引き続き、今回はルーズリーフ!といきたいところだが、ここはひとつ本体である紙の方ではなく、それが入っている「袋」に注目したい。

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ルーズリーフケースの地味な進化~もう「あの袋め!」とは言わせない~
ルーズリーフケースの地味な進化~もう「あの袋め!」とは言わせない~ 全 6 枚 拡大写真
 画期的な新機能や華々しさはないけれど、地味に進化している定番文具をとりあげるこのコラム。前回のキャンパスノートに引き続き、今回はルーズリーフ!といきたいところだが、ここはひとつ本体である紙の方ではなく、それが入っている「袋」に注目したい。

◆ノート派?それともルーズリーフ派?

 多くの人にとって文房具は、学生時代の記憶と深く結びついているものではないだろうか。その頃の話題ともなれば、休み時間に消しゴムで遊んだよね、カッコイイ筆箱欲しかったよね、と思い出話にも花が咲く。「ノート派だった?それともルーズリーフ派?」というのも、定番のトークテーマのひとつだ。

 しかし、この流れで話題がルーズリーフに及ぶと、思わぬ事態が誘発されることがある。ルーズリーフ派だった人たちがにわかに興奮しはじめて、出るわ出るわ、ルーズリーフが入っていた「あの袋」に対する不満の数々。普段は温厚な友人知人が「あの袋!許せん!」と熱くなるのを目の当たりすれば、当時のストレスはいかばかりか、想像にあまりあるものがある。

◆「あの袋」に仕掛けられた数々のトラップ

 かくいう私も学生時代はルーズリーフ派だったので、当時を思い返すたびに「あの袋め!」となる人間のひとりである。例えるなら、ルーズリーフの袋は、数々の「トラップ」が仕掛けられ、破産せずにはゴールできない人生ゲームのようなもの。最後まで気持ちよく使い切るのは至難の技だ。そのトラップによってもたらされる悲劇がどのようなものか、ほんの一例をあげてみよう。

・新しいルーズリーフを買ってきて、さあやるぞと袋を開ける。すると、取り出したリーフが袋のベロの糊にうっかりくっついてしまう。あわててはがそうとして、ビリッ。あーあ、1枚無駄にした。せっかくMAXだったやる気も、いきなりの精神的ダメージでさっそくマイナス100ポイントである。

・気を取り直して、勉強を続ける。リーフを取り出すと、数枚がついてきた。そのうち1枚に書きはじめて、残りを無意識のうちに袋の上に置いてしまう。あっ!と気づいた時にはすでに遅し。袋側の糊にくっついて、はがすとまたビリッ。2回目なのでダメージはより大きく、やる気はさらにマイナス150ポイントだ。

・もう同じ失敗は繰り返すまい、袋から出し入れするときは慎重に慎重に、と自分に言い聞かせつつ使っていたら、糊もほどよく弱ってきた。これでひと安心、と胸をなでおろしたのもつかの間。今度は糊の部分にカバンの中のホコリや細かいゴミがくっついて、なんだか汚らしいことに。その状態が目に入るたびに、やる気も10ポイント減。1回あたりは大したことなく思えるが、回数が多いのでボディブローのようにジワジワと効いてくる。

・それでもガマンして持ち歩いているうちに、ルーズリーフの薄い袋はどんどん傷んでいく。また、開け閉めのダメージも蓄積し、ついには端の方が破れてしまう。気がつくと中身が飛び出していることもあって、そうなると一度に何枚ものリーフがダメになる。袋はセロテープで補強してみるも、精神的ダメージは今までで最大のマイナス200ポイント。

・いよいよ残り枚数が少なくなると、中のルーズリーフの厚みによって保たれていたハリが失われ、カバンの中や机の中で他の荷物に押しやられ、最後は袋も中のルーズリーフも、すべてが折れ曲がってぐちゃぐちゃに。こうなるともう、やる気はマイナスどころか戦意喪失のギブアップ。完全にゲームオーバーである。

 ルーズリーフを使うことは、これらのトラップをいかに回避するかという、終わらない戦いでもあるのだ。ルーズリーフ利用者の56.5%が、リーフを袋ごと持ち歩いている(コクヨ調べ)ことを考えると、「あの袋」のトラップは今この瞬間にも、誰かの精神にダメージを与えていることだろう。



◆ルーズリーフを持ち歩くために考えられた専用ケース

 日本最大の文房具メーカーとその開発者達が、この悲劇に無関心であったはずはない。持てる力を駆使し、従来の袋に代わってルーズリーフを最後まで気持ちよく持ち歩くための専用ケースを考案した。その名もずばり、コクヨの「ルーズリーフケース」である。

 「ルーズリーフケース」の素材は、クリヤーホルダー等と同じ厚みのPP(ポリプロピレン)シートだ。一般的なルーズリーフの袋よりもずっと厚く丈夫なので、持ち歩いたり、中身を頻繁に出し入れしたりしてもボロボロにならず、中の紙をしっかり守ってくれる。封筒のように閉じることができ、フタにはストッパーもついているため、うっかり逆さまにしても中身が落ちにくく安心だ。糊を使っていないから、リーフがくっついてしまう心配もない。

 購入時にセットされている30枚のルーズリーフ(ドット入り罫線)を使い終わったら、無地や方眼といった、好みのタイプのものに入れ替えてもいいだろう。収納可能枚数は最大で100枚。一般的なルーズリーフなら、買ってきてすぐに丸ごと移し替えられる。授業で配られたプリントをファイリングするまでの一時保管場所としても便利だ。

 日々進化する文房具を見ていると、「私の学生時代にあったらなあ」と思うことは少なくないが、「ルーズリーフケース」はその最たるもののひとつだ。もちろん、いい文房具を使ったからといって、ただちに頭が良くなったり成績が上がったりするわけではないけれど、「勉強しよう」という気分を盛り上げるには、大いに役に立つものである。

 ルーズリーフ派で「イマイチやる気がわかないなあ」という人は、くちゃくちゃになったルーズリーフの袋から知らず知らずのうちに精神的ダメージを受けているのが原因かもしれない。もしまだ「あの袋」を使っているのなら、試してみる価値はありますよ。この「ルーズリーフケース」を、ね。

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ヨシムラマリ
1983年生まれ、神奈川県出身。会社員として働くかたわら、イラスト制作を手がける。日常の「あっ」という瞬間をイラストと文章で切り取るブログ「コロメガネ」を運営。また、文房具マニアとしてワークショップ、イベントでも活動中。

《ヨシムラマリ》

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