義務教育を完全無償に…経済同友会が「子どもの貧困」提言

 経済同友会は3月30日、「子どもの貧困・機会格差の根本的な解決に向けて―未来への投資による真の総活躍社会の実現―」と題した提言を発表した。子どもの貧困対策に社会全体で取り組む必要性を訴え、義務教育の完全無償化などの具体策を示している。

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相対的貧困率の推移
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 経済同友会は3月30日、「子どもの貧困・機会格差の根本的な解決に向けて―未来への投資による真の総活躍社会の実現―」と題した提言を発表した。子どもの貧困対策に社会全体で取り組む必要性を訴え、義務教育の完全無償化などの具体策を示している。

 日本の子どもの貧困率は上昇傾向にあり、2012年には16.3%と6人に1人の子どもが相対的貧困にある。経済同友会では、子どもの貧困を放置することは、所得や税・社会保険料収入の減少、社会保障給付の増加など社会的損失を招き、社会の停滞や人的資源の不足など、社会と企業の持続的成長にも大きな影響を与えると指摘。

 政府の施策は、財政制約から予算規模が小さく、対症療法に偏った対策となっているとし、「未来への投資」のために企業の立場からも行動を起こす必要があると、意識改革に取り組むための基盤となる共通認識と具体策を明示した。

 提言では、日本の子どもの貧困の実態について、「ひとり親と子どものみ世帯の貧困率が約50%と突出」「目に見える貧困と見えにくい貧困が混在」などと解説。教育財政が私費負担に依存し、家庭の経済的背景が子どもの学力に大きな影響を与えている実態を訴え、「教育こそが貧困の連鎖を断ち切る鍵」「子どもへの投資は、将来への効果が高い社会保障」「子どもへの支援は社会全体で担い、社会の構成員がそれぞれの経済力に応じて負担しなければならない」など、共通認識すべき7つの事項を列挙している。

 さらに具体的な行動の一例として、給食費や活動費などを含めた「義務教育期間の完全無償化」をはじめ、「高校の義務教育化」「3~5歳の就学前教育の義務化・無償化」など、11項目を提示。学生に対する給付型奨学金制度については、「規模や金額は十分とは言えない」とし、制度の整備・拡充が望まれるとした。

 また、大学を除く教育の無償化には約3兆円の財源が必要と試算。「子ども国債」の発行、消費増税分の教育目的化、ふるさと納税の地元出身の学生を対象とした奨学基金化などのアイデアを提案した。

《奥山直美》

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