発達の凹凸、遅れや偏りを理解する大人の一歩

 耳にすることも多くなった「発達障害」。児童保育事業や待機児童問題に取り組むSHUHARI代表取締役の中村敏也氏に、発達に凹凸のある子どもに対し、大人は何ができるのか聞いた。

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元気キッズ 保育園のようす 画像提供:SHUHARI
元気キッズ 保育園のようす 画像提供:SHUHARI 全 3 枚 拡大写真
 耳にすることも多くなった、子どもの「発達障害」。リセマムは2月から6月まで、コラム「発達障害」内で全6回にわたり、子どもの発達の遅れや偏りの側面からその特徴や具体的な関わり方について紹介してきた。

 発達障害に関する情報や論説は、インターネットの普及に比例して数十年前より格段に増えつつある。しかし、意外にも与えられた情報から「では大人は子どものために、何ができるのか」を導き出すのは難しい。リセマムでは、児童保育事業や待機児童問題に取り組むSHUHARI代表取締役の中村敏也氏に、発達に凹凸のある子どもに対し、大人は何ができるのか聞いた。

--発達に遅れや偏りを抱える子どもに対し、大人は何ができますか。

 大人の皆さんにはまず、「自閉症や発達障害を抱えた人たちの世界を想像してみてください」、とお願いしたいです。それが、大人が子どもたちにできることのひとつです。でも、ただ闇雲に想像するのは難しいので、発達障害や自閉症を抱えた方が書かれた書物を読んでみることをお勧めします。

--たとえばどういった本がありますか。

 東田直樹さんの「自閉症の僕が跳びはねる理由」(エスコアール、著:東田直樹)や、「ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい」(KADOKAWA/角川書店、著:クリスティン・バーネット、翻訳:永峯涼)があります。

 少しでも彼らが感じている世界を身近に感じ、理解できれば、きっと私たち一人一人ができることが見えてくるのではないかと思います。

 そして、発達障害を抱えた子どもたちの立場になって考えるためには、正しい知識を得ることが大切です。でも、正しい知識の普及には時間がかかりますよね。周りの大人が正しい知識を身に付け、発達障害をひとつの個性として尊重し、社会が発達に凸凹のある子どもと、その保護者に対し寛容になっていくためには、大人の行動が大きく関係しているなと思います

--発達に凹凸を抱えている子どもの保護者や、そうかもしれないと悩んでいる保護者に向けて、メッセージはありますか。

 少しでも悩んでいることがあれば、地域の専門施設に相談してください。すでに利用している施設がある方はそちらへ、まだどこにも相談していない方は、お住まいの自治体の相談窓口へ悩んでいることを相談してみてください。

 最近では診断を受けるまで半年も待つ、という声もありますが、相談に行く施設や療育施設はお子さまの年齢や発達段階によっても異なるため、情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。 現在は、どの自治体であっても、発達障害について相談できる専門員がいます。ちょっとした悩みであっても、気軽に相談する場所があるだけで心が救われます。

 発達障害ではない、つまり定型発達のお子さまをお持ちのご友人に相談しても、きっと「大丈夫だよ」と言われてしまうかもしれません。子どもによって発達、発育は異なりますから、それはそうとしか、答えられませんよね。

 でも、そう言われた本人は、頭の中で「あの子とは違うからわからないんだ」「でも少しすればみんなと同じようになるから我慢してみようかな」「…でも、早く何かしないといけないのかも」…と、ぐるぐると自問自答してしまう。思考の無限ループに陥ります。

 もし、ご自身の思いや行動にこういった思いが当てはまるところがあるなら、支援者へ相談してみてください。お子さまがもし仮に発達障害を抱えていたり、新しい症状が見られたりした際に、正しい知識を持って対応できます。

--なかなか行動に起こすのは難しいですね。

 そうですね。私が運営している児童発達支援施設では、初めて見学しに来た方が、話をしているうちに思いつめて泣いてしまうことが多々あります。悩みを聞いてくれる場所がなかった、一人で悩んで辛かったと、誰にも相談できず行動できないでいる保護者の方は、きっと多いのだと思います。

 発達障害を抱えたお子さまをお持ちの方は、先の見えない暗闇のトンネルの中にいるように思っているかもしれません。でも、少しでも子どもへの向きあい方や目指すべき方向がわかれば、光がさし、安心できます。勇気も出てくるでしょう。

 悩んでいる方は、正しい知識のある機関に相談し、子育てを社会とともに進めてみてはいかがでしょうか。思いを受け止めてくれる方々が待っているはずです。発達障害について正しい知識が普及し、少しでも寛容な世の中になることを心より願っております。

--ありがとうございました。

 SHUHARI代表取締役の中村敏也氏は、明治大学経営学部卒業後、企業勤務の傍ら待機児童問題に興味を持ち、保育学や法制度を学ぶ。2004年9月には埼玉県志木市にて「保育園 元気キッズ 志木園」を開園。以降、地域のニーズに対応しながら小規模保育事業、認可保育所、児童発達支援事業へと展開を拡げている。新座市子ども子育て会議委員も務める。

《佐藤亜希》

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