【全国学力テスト】低所得でも高い学力…生活習慣や読書が好影響

 規則的な生活を送り、本や新聞などに親しむ子どもは、親の年収や学歴が低くても、学力が高い傾向にあることが平成30年6月27日、文部科学省が公表した平成29年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)結果の分析から明らかになった。

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不利な環境を克服している児童生徒の特徴
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 規則的な生活を送り、本や新聞などに親しむ子どもは、親の年収や学歴が低くても、学力が高い傾向にあることが平成30年6月27日、文部科学省が公表した平成29年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)結果の分析から明らかになった。

 平成29年度全国学力テストは平成29年5月、全国の小学6年生と中学3年生を対象に実施。今回、追加調査として行った「保護者に対する調査」の結果をもとに家庭状況と学力の関係、成果をあげている学校の取組みなどを分析し、公表した。保護者調査は、平成25年度に続き、2回目。

 調査結果から家庭の社会経済的背景として、家庭所得、父親の学歴、母親の学歴という3つの変数を合成した指標(SES:Socio-Economic Status)を4段階にわけて分析。平成25年度の結果分析と同様、小6、中3のいずれもSESが高いほど正答率が高いことがわかった。また、SESが高いほど正答率の学力のばらつきが小さく、SESが低いほどばらつきが大きかった。

 一方、今回の分析では新たにSESが低い層においても高学力の生徒・児童が一定数いることが判明した。親の年収や学歴が低いにもかかわらず、国語・算数(数学)の総正答率が上位25%に位置する子どもの特徴を分析したところ、保護者が子どもに対し、規則的な生活習慣を整え、文字に親しむよう促し、知的な好奇心を高めるよう働きかけていることが明らかになった。行事やPTA活動に参加するなど、学校教育に対して親和的な姿勢も見られた。

 具体的には、「毎日子どもに朝食を食べさせている」「子どもに本や新聞を読むようにすすめている」「子どもが小さいころ絵本の読み聞かせをした」「計画的に勉強するよう子どもに促している」「PTA活動や保護者会などによく参加する」と回答した保護者が多かった。

 また、親の年収や学力など不利な環境を克服している児童生徒は、授業の復習を重視する傾向が強く、塾などに過度に頼らなくても一定の学習時間を確保していた。学校で習う内容の着実な定着を図る取組みが、高い学力水準の支えになっていると考えられるという。

 分析では、子どもの学力は、自制心や意欲、忍耐力などを示す指標「非認知スキル」とゆるやかな相関があることから、SESが相対的に低い場合でも、保護者が適切に働きかければ、子どもの非認知スキルを高め、学力を一定程度押し上げる可能性があるとも指摘。その傾向は小学生でより強い影響があるとしている。ただし、その可能性がどの程度確かなのかはさらに検討が必要としている。

 非認知スキルを向上させるための保護者の働きかけは、具体的には「ほめて自信を持たせる」「努力の大切さを伝える」「最後までやり抜くことの大切さを伝える」「毎日朝食を食べさせる」「ボランティア活動などへの参加を促す」など。

 このほか、学校風土と子どもの学力との関係として、継続的に高い学力をマークする学校の特徴には、「家庭学習習慣の定着と家庭への啓発、1人も見逃さない個別指導」「若手とベテランが学び合う同僚性と学校の組織的な取組み」などがあったという。

《奥山直美》

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