教員の仕事時間、日本は参加国中で最長…ODEC調査

 経済協力開発機構(OECD)は2019年6月19日、教員指導環境調査(TALIS)に基づく新報告書「生涯学習者としての教員と校長」を公表。報告書では、教職を財政的にも知的にももっと魅力あるものにして、世界的に高まる質の高い教師への需要を満たす必要があると述べている。

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日本の教員の仕事時間は参加国中で最長
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 経済協力開発機構(OECD)は2019年6月19日、教員指導環境調査(TALIS)に基づく新報告書「生涯学習者としての教員と校長」を公表。報告書では、教職を財政的にも知的にももっと魅力あるものにして、世界的に高まる質の高い教師への需要を満たす必要があると述べている。

 教員指導環境調査(TALIS)は、教員と校長の声を聞くことで、教職の知識と技能の強化を支援して、その専門技術を支援することを目的に実施。2008年に第1回調査、2013年に第2回調査が行われ、2018年が第3回調査にあたる。第3回調査には、世界48か国・地域の1万5,000校の小学校、中学校、高等学校の教員と校長約26万人が参加している。

 報告書では、教師に将来の社会の変化に対処できるようにより良い機会を与えられるようにするには、まだまだ改善すべき点があると指摘。OECD諸国全体で、教職課程や訓練の一環として授業のためのICT利用についての訓練を受けたことがある教師は56%と、全体の半数をわずかに上回る程度だった。ICTの訓練を受けたことがある人の割合がもっとも高いのは、「チリ」と「メキシコ」でそれぞれ77%。もっとも低いのは、「スウェーデン」37%、「スペイン」38%だった。また、教師の約18%は、授業にICTスキルを用いるための職能開発を非常に必要だと考えていた。

 TALISに参加したOECD諸国においては、通常の授業時間のうち授業にあてられている時間はわずか78%で、そのほかの時間は「秩序の維持」13%と「学級経営」8%にあてられている。生徒と教員の関係は2008年以降、多くの国で改善しており、教員の95%は生徒と教員の関係は一般的にうまくいっていると回答。しかし、校長の14%は生徒間で脅迫行為やいじめが定期的にあると答えていた。

 そのほか、最近の移民流入に関わる変化が学級の構成にも影響を与えている。OECD諸国の教員のほぼ3分の1が、勤務先の全校生徒のうち少なくとも1%が難民であると回答。また、17%の教員は、少なくとも1割の生徒が移民であると答えた。80%の教員は、自分の学校でカリキュラムにグローバルな問題を取り入れ、民族や文化に根ざした差別を解決する方法を生徒に指導しているという。

 国立教育政策研究所は、今回の調査結果について報告書の要約などをWebサイトに掲載。2018報告書のポイントでは、日本の教員の現状と課題についてまとめている。学級の規律と学習の雰囲気で日本はよい結果を示している一方で、教員の仕事時間は参加国中でもっとも長く、人材不足感も大きいこと、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善や探究的な学習に関わる指導実践について頻繁に行う中学校教員の割合が低いこと、女性の教員の割合が少ないことなどが明らかになった。

 TALISに基づく新報告書は、ODECのWebサイトにて全文(英語版)が閲覧できる。

《黄金崎綾乃》

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