途中、砂漠地帯などでキャンプしながら5日間でオーストラリアを縦断するという過酷なレースに2009年から参戦しているのが、工学院大学。同大学ソーラーチームは6月27日、この2019ブリヂストンワールドソーラーチャレンジに参戦する競技用ソーラーカー最新モデルを公開。前回は世界の強豪を相手に7位と苦戦。ことしは、いちからつくりなおしたこの新型モデルで53チームのなかの頂点をねらう。
その名も「Eagle」(イーグル)。帝人やミツバ、ブリヂストン、NTNなど48社のサポートを得ながら、産学連携で開発し、学生たちがひとつひとつ自らの手で設計しつくりあげた新型モデルだ。まずそのスペックをみていこう。
車体寸法は全幅996・全長4995・全高973mm。重量は前回モデルより20%軽量化させた150kg。ホイールは4輪。モノハル(単胴型)ボディはCFRP(開繊糸織物)+アラミドハニカムサンドイッチ構造。サスペンションには新たにハイドロニューマチックサスペンションと非線形ばね(エアスプリング+油圧シリンダのハイブリッド式)を採用した。
◆ソーラーパネルが後ろにむけて傾斜している理由
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今回の新型モデルの特長は、その名からもわかるとおり、鷲(Eagle)のくちばしを模したノーズ形状。自然模倣(Nature Morphing)によって空気抵抗の最適化を図り、レース中の太陽電池発電が最も有利なレイアウトとした。
ソーラーパネルは、後ろにむけて傾斜している。ここにオーストラリア大陸を南下するレースを実感させる理由がある。オーストラリアは南半球。最北端から最南端の街へと走るソーラーカーは、ほぼ背後から直射日光を受ける。そんな気候状況から空力シミュレーションを図り、空力と直射日光を受ける角度を最適化し、こうしたスタイルに仕上げたという。
◆各社の最新技術が詰まった「地上を駆ける鷲」
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まだまだある。AUTODESK Fusion 360 を使い同大学ソーラーチームが3次元設計技術を開発。CAMは設計データから切削パスと時間をシミュレーションし、実際の工程でかかる時間を13分の1に短縮した。さらに通信は スカパーJSAT グループなどによる人工衛星通信を使ってレースに挑む。そして選手たちの体調管理は大塚製薬がサポートするという具合に、48社がかかわっている。
◆オーストラリア大陸特有の道路環境に対応したサスペンションで頂点をねらう
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同チームが「大幅に改良した」と自信を持つ部分のひとつが、サスペンション。オーストラリア大陸に特有の、ピッチや荒い路面に対し、ハイドロニューマチックサスペンションと非線形ばねを採用し「縦のピッチングは想像以上に抑えられている。このピッチングが消えるだけで、空気抵抗が大きく減り、高速巡航につながる」という。
工学院大学の「地上をしなやかに駆ける鷲」は、どこまで突き進むか。Eagleは、7月にブリヂストンのテストコースで訓練走行を行い、7月下旬にオーストラリアへ渡る。10月初旬に車検を通過し、10月13日、いよいよ豪州3000kmの滑走へと動き出す。