離島教員の特別支援教育に関する遠隔研修、モデル構築に成功

 島根県立大学とOKIは2020年3月4日、1年間の実証実験を経て、「離島教員の特別支援教育の専門性を持続的に向上させる遠隔研修モデルの構築」に成功したと発表した。

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隠岐の島町での研修風景
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 島根県立大学とOKIは2020年3月4日、1年間の実証実験を経て、「離島教員の特別支援教育の専門性を持続的に向上させる遠隔研修モデルの構築」に成功したと発表した。

 特別支援教育の現場では、すべての教員が特別支援教育に関する一定の専門性を有し、高い現場解決能力を持つことが求められる。しかし離島においては、地理的な制約などにより、高度な内容の研修や専門家からの支援を受ける機会が限定されていた。また従来の研修では、学んだ内容だけではそれぞれの現場の状況に合わせることが難しい、効果が一時的、などの声もあり、「現場解決能力」の持続的な向上が課題となっていた。

 今回の実証実験は、隠岐の島町立小中学校の特別支援教育に関わる教員13名を対象とし、2019年4月より実施。島根県立大学で特別支援教育の専門教員を務める西村健一准教授による教育現場の課題解決に役立つ研修を、バーチャルオフィスシステム「ワークウェルコミュニケータクラウド」を活用して6回にわたり遠隔で行った。

 たとえば、「友達とのかかわりの中で衝動的・攻撃的な行動がある子どもについて」をテーマとした研修では、子どもの抱える1番の課題を洗い出し、課題の原因には本人の「言葉での表現の難しさ」があるのではないかとの仮説を設定。原因解決のための支援アイデアについて参加者全員で意見を抽出し、西村准教授は参加者からの意見に合わせた助言を行った。研修後、校内でクールダウンの方法の検討や、スクリプト(台本)を活用した会話スキルの獲得などを具体的に実践した結果、少しずつ友達とのトラブルが減ってきていると報告されている。

 参加した教員は、遠隔研修を通じて最新の指導方法などを学ぶことにより、特別支援教育の専門性を高めることができたほか、ほかの教員との「学び合い」を西村准教授がファシリテートすることにより、より効果の高い支援方法を教員同士で見つけることができた、と効果を語った。また、従来は各学校から教育委員会に相談していた解決困難事例について話し合うことで、各学校で実施可能な具体的支援策の立案・実施までを教員同士で行うことができるようになるなど、「現場解決能力」を高めることができた。

 今回の実証実験を通して構築した「離島教員の特別支援教育の専門性を持続的に向上させる遠隔研修モデル」は、離島のすべての小中学校と専門家をICT技術で結び、全員が自身の勤務校から参加できるのが特徴。各学校だけでは対応が難しかった事例を、専門家とともに「問題行動の特定」「行動の原因分析」「支援方法の特定」という流れに沿って段階的に話し合うことで、全員が支援の根拠を理解し、教育現場で実施可能な支援方法をともに導き出し、共有することができる。

 今回の実証実験で得られた知見は、全国の中山間地や離島などでも応用が可能。島根県立大学とOKIは、全国の必要な地域へ得られたノウハウを提供することで、特別支援教育のレベルアップの仕組み作りに継続的に寄与していくとしている。

《桑田あや》

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