子供の「5月病」対策、早めの対応がベスト…登校渋りに注意

 2024年における5月病へのケアについてまとめました。特にポイントとなるのはスマホ、タブレット、PCなどの電子機器との関わりです。そういった機器との関わり方を考える日々になればと思います。

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 ゴールデンウィーク(GW)明けは、子供がトラブルに陥りやすい時期の1つです。一般的に「5月病」と言われるものです。子供だけでなく、大人でもよくあるものです。新社会人などが新しい職場に馴染めずに辞めてしまうことなどと似た状況のものです。そういったことに対して、親の立場で対応ができるものもあります。2020年以降の新型コロナウイルスの流行は子供の生活に影響を与えました。アフターコロナの現在、子供の5月病において気にしていくことは以前とは変化している部分があります。2024年における5月病へのケアについてまとめました。特にポイントとなるのはスマホ、タブレット、PCなどの電子機器との関わりです。そういった機器との関わり方を考える日々になればと思います。

早めの対応が良い

 「5月病」だけでなく「4月病」と呼ばれる症状があります。4月は、新しい環境になる人も多く、変化などがストレスとなり、自律神経の乱れから、頭痛、めまい、倦怠感、不眠などを訴える人が多くなるそうです。4月は、学校や会社などの環境の変化に加え、天候の変化も激しい時期です。半袖で大丈夫なほど温暖な日もありますが、真冬のような冷たい風が吹く日もあります。そういった天候の変化が体へ負荷を掛けてしまうこともあります。新しい環境では、気分が高まりがちでもあり、オーバーワークになりやすくもあります。そういった無理をしながらの4月を乗り切り、ホッとした連休の後に学校や会社などに足が向かなくなってしまうものが「5月病」です。症状が4月に顕著になってきたものは「4月病」と呼ばれることもあります。

 「5月病」は医師の診断を受けると「適応障害」と説明されることが多いです。症状は、「うつ病」と似ているのですが、「うつ病」は原因不明のストレスによって発症します。「5月病」の場合、ストレスの原因がわかっていることが多いです。それ(または、それら)の解消のための方策を考えていくことが大切です。

 また、「5月病」は真面目な性格の人がなりやすい傾向にあります。きちんとやらなければという思いが悪い形で出てしまったものです。子供の場合、親の考え方が影響を与えることが多いです。親としては、きちんとするという部分を求めすぎないことも大事でしょう。きちんとすることは大切なことですが、そのプレッシャーが子供を苦しめてしまうこともあることを知っておくと良いでしょう。

「不登校」の発端にもなる?

 各種の調査では、子供が「登校渋り」「不登校」のきっかけとなる時期がわかっています。長期休業明け(夏休み明け、冬休み明け)、GW明けです。5月、9月、1月です。同じ長期休業明けでも春休み明けの4月は少し状況が違います。年度が変わり、心新たに頑張ろうという意識がある子供が多いようです。他の長期休業明けと比べて休みがちになる子供は少ないです。

 ところで、GW明けの時期の登校渋りは、注意が必要です、そのままずるずるとなってしまうこともあります。新年度になり、頑張っていたものが少しずつ崩れてしまうようなイメージです。心身の疲れが影響し、休みがちになってケースもあります。

 もちろん、学校に行っていることがすべて良く、学校に行かれない状況がすべて悪いということではありません。近年、学校以外の学びの場も増えてきました。コロナ以降、GIGA端末の活用により、オンラインでの授業参加などができる学校も増えています。そういった状況ではありますが、学校に行きたいという思いのある子供がスムーズに学校に行くことができるようにすること、また、学校に行きたいと思いながらも行かれなくなっている子供を適切にケアしていくことなどは必要なことだと思います。

GIGA端末の功罪

 先ほども書きましたが、新型コロナウイルスの流行により、日本では一気にGIGA端末の配備が進みました。日本の学校における学び方の大きな転換です。日本中のすべての学校で一人一台端末を用いた授業が行われています。個別最適な学びの実現に向けて、とても良いことだと思います。

 ただ、GIGA端末の活用は残念ながら負の面があることも事実です。GIGA端末などを用いて不適切なことが行われてしまうことがあります。「不適切な動画を見ること」「SNSでいじめなどをすること」「ゲームなどをやり過ぎること」などです。これまでも家庭にあるスマホ、タブレット、PCなどで子供は色々なことをしていました。そういったことによってトラブルもありましたが、GIGA端末が配られたことにより変化が生じています。子供が以前よりもオンラインと身近になったことが影響を与えていると私は感じています。

 そういった機器が身近になることでプラスになることもありますが、マイナスとして出てしまうこともあります。GWに関連したものでは、「生活リズムの乱れ」です。ゲームや動画の視聴などによって夜遅くまで起きており、朝が遅くなる子供もいるはずです。そういった子供は以前もいたのですが、その数が増えてきていることが予想されます。ゲームや動画は刺激が強く、中毒性があります。野放しにしていれば、子供はずっとそういったことをしてしまう可能性もあります。

端末との適切な関わりの模索が必要

 スマホ、タブレット、PCなどとの適切な関わり方を家庭で考えていくことが以前よりも大事になってきています。「適切に関わる」ということは単に「それらに触れる時間を2時間以内にする」などと決めることとは違うと私は考えています。数年前に「ノースマホデイ」「ノーゲームデイ」などを自治体や学校で決め、その日はスマホやゲームをしないという取組みをしていたものを聞いたことがあります。一律に禁止や制限をしていくことは得策ではないでしょう。

 スマホ、タブレット、PCは、遊びの道具でもありますが、学びの道具でもあり、大人にとっては仕事の道具でもあります。子供にとっては、GIGA端末が配られて以降、学びの道具として使われる頻度が増えました。オンラインで取り組むことのできる学習アプリは、質も量も急激に上がっています。そういった現状を踏まえると、単に「使用制限をする」というやり方では子供の質の良い学びとの両立は難しいでしょう。同じ道具(スマホ、タブレット、PC)を使いながらも、時には学び、時には遊ぶことのバランスを取ることができるようになることが大切です。そういった部分を意識し、家庭での使い方のルールのようなものを子供と一緒に作っていくことが望ましいでしょう。ルールの中には「ベッドの中でタブレットで動画などを見ない」などのものが含まれてくると思います。適切な使い方を決めていくことで、生活リズムの乱れを防ぐことにつながります。

 難しいのが、「適切な関わり方」はそれぞれの家庭の状況によって違うことです。タブレット/PCを使った学びを家庭学習のメインにしている家庭があります。昨今、タブレットを活用した通信教育はたくさんあります。逆にデジタルではなく実体験(手を動かすこと)を大事にしている家庭もあります。家庭の環境が多様であり、その状況に合わせて「適切な関わり方」を考えていく必要があります。

 今回、連休中、連休明けの時期に親が子どもと関わる際に心掛けると良いことをまとめました。少し特殊な時期である「連休明け」です。親も子供も余裕がなく、バタバタとしてしまいがちな時期です。これまで書いてきたように連休の過ごし方を少し工夫することで、スムーズに学校生活を再開することにつながるのではと思います。親にとっても子供にとっても良い休みとなることを願っています。

《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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