無意識の「リーダーシップ」に気付いて自信を育む…甲南女子大学が就職に強い理由

 ワンキャンパスでの実践的な学びときめ細やかなキャリア教育により、毎年、関西の実就職率ランキング上位に名を連ねる甲南女子大学(兵庫県神戸市)。2025年度入学以降の全学生が受講可能、学部学科を横断し共に学びあう「新リーダーシップ」教育の魅力とは。リーダーシップ教育を牽引する佐伯勇教授と森本真理教授、在学生3名に話を聞いた。

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自分が無意識に発揮している「リーダーシップ」に気付く…甲南女子大学が就職に強い理由
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 ワンキャンパスでの実践的な学びときめ細やかなキャリア教育により、毎年、関西の実就職率ランキング上位に名を連ねる甲南女子大学(兵庫県神戸市)。2026年4月から社会学部と教育学部を開設し7学部10学科となり、より「未来への実践力」を身に付けた「自律した女性の育成」を目指す。

 甲南女子大学の教育の柱として近年注目されているのが、「新リーダーシップ」教育である。人間科学部文化社会学科・佐伯勇教授が「これからの時代には、誰もがリーダーシップを発揮できるような組織や人材が求められる」と2017年に全国の女子大で初めて正課授業に取り入れ、2025年4月より副学長(リーダーシップ教育担当)、リーダーシップ教育センター長に就任した。

 リーダーシップというと、「先頭に立って集団を引っ張る」というイメージが根強いが、甲南女子大学では、「リーダーシップ」を、「チームの目標を達成するために他のメンバーに与える影響力」と定義。ひとりひとりの個性や強みを生かした「全員発揮型」のリーダーシップを、「基礎」「応用」「発展」3段階の積み上げ式プログラムで実践的に身に付けていく。「基礎」はおもに1年生が、プロジェクト型学習を通じてリーダーシップを発揮する経験をし、仲間と振り返りやフィードバックをしながら、自己のリーダーシップを開発。「応用」では、「基礎」を終えた学生が学習アシスタントとして授業を運営し、後輩のリーダーシップの成長を手助けすることで他者のリーダーシップ開発を支援する力を身に付ける。正課外の「発展」では、高校でリーダーシップの授業を担当したり、全国の大学の学生と混成のチームでプロジェクトに取り組んだりする機会を通じ、学外で自己と他者のリーダーシップ開発を実践することで、自信を深めていく。

 入学当初はコミュニケーション能力や実践的な経験不足を不安に思う学生が多い中、「授業を通じて自己の成長を感じた」割合は95%と、リーダーシップ・プログラム受講生の満足度は高い。97%の受講生が「自分のリーダーシップの特徴に気が付いた」と答えるこの「新リーダーシップ」科目は、2025年度から全学部の新入生に受講を推奨。新入生は1年間、他学部の学生と一緒に授業を受けることで、多様な価値観や個性に触れながら交流を深め、自分らしいリーダーシップのあり方を実践的に学ぶことができる。

 2025年3月23日、神戸の海と街を一望できる丘の上の広大なキャンパスで開催されたオープンキャンパスは多くの人で賑わい、同日に実施された「新リーダーシップ」教育の体験授業には、事前予約をした高校生約40名と保護者が参加した。

在学生が授業をつくる「新リーダーシップ」教育の高校生向け体験授業

 体験授業では2名の学習アシスタントが司会進行し、高校生のグループには、進行補助として「新リーダーシップ」科目を受講した在学生を配置。冒頭に授業の到達目標を示した後、アイスブレイクの自己紹介と「漢字当てゲーム」で参加者の緊張をほぐした。

 続いて高校生はグループの中で司会・司会サポート・書記・タイムキーパーの4つの役割を分担。同授業では「頷くこともリーダーシップ」と謳われ、司会進行のみならず、メモを取って議論を整理することや話しやすい雰囲気を作ること、目的を確認して時間を管理することも「新しいリーダーシップ」と定義されている。

「新リーダーシップ」教育の体験授業に高校生約40名と保護者が参加した
「新リーダーシップ」教育の授業は、学生たちが協力しあいながら授業をつくる

 グループワークでは「ポイ捨て」防止の仕掛けについて、活発にアイデアや意見を交換しているようすが見られた。印象的だったのは振り返りの時間だ。「自分以外のメンバーがグループに与えていた良い影響」を共有しあい、会場はポジティブな雰囲気に包まれた。

グループワークでは「ポイ捨て」防止の仕掛けについて、高校生たちがアイデアを出しあった

 森本真理教授は、「保護者の中には『うちの子は普段あまり話すタイプではないのに、積極的に話していた』とびっくりされている方もいました」と語る。高校生は、自分の無意識の行動を強みとして認めてもらい、たくさんの気付きがあっただろう。

 体験授業終了後、学習アシスタントを務めた3名の現役学生(学年は2025年3月時点)と、「新リーダーシップ」教育を牽引する佐伯教授、森本教授に話を聞いた。

左から、森本教授、A・Nさん、S・Yさん、S・Hさん、佐伯教授

自分が無意識に発揮している「リーダーシップ」に気付くのが出発点

--体験授業ではとてもスムーズに司会進行をされていましたね。学習アシスタントの皆さんのサポートで、参加者の緊張がほぐれ、授業を楽しんでいたようすが印象に残っています。

A・Nさん(文学部日本語日本文化学科3年):これまでも何度か司会をしてきましたが、今日は今まで以上に学生たちが楽しそうに盛り上げてくれて、緊張せず楽しく進行することができました。事前のシミュレーションよりも高校生の皆さんから新しいアイデアをたくさん出してもらい、自分自身にも学びになりました。

--学生の皆さんはどのようなきっかけで「新リーダーシップ」科目を受講したのでしょうか。また、「リーダーシップ」のイメージに変化はありましたか。

S・Yさん(文学部日本語日本文化学科3年):私は小さいころから学級委員として先頭に立ってチームをまとめたり、大勢で何かを進めたりすることが好きで、自分はリーダーに向いていると思っていました。ところが、高校生のときに生徒会に立候補して落選した経験から、一気に自己肯定感が下がってしまい、挑戦することに消極的になっていました。そうした中、甲南女子大学に入学して、この授業を知ったとき、「この内容は自分に向いているはず!」と思い受講しました。実際に授業を受けてみると、「全員発揮型」のリーダーシップの考え方に触れ、従来のイメージとの違いに大変驚きました。新しい価値観を学ぶのは面白く、今は、自分の可能性が広がっている実感があります。

A・Nさん: 私は先輩に勧められて、「グループワーク型の授業が楽しそう!」と思い、受講しました。リーダーシップ=人の先頭に立つというイメージでしたが、授業で「頷くだけでもリーダーシップを発揮している」と教わり、とても衝撃を受けました。意見を出したり、話を振ったりというわかりやすい貢献だけでなく、頷いて肯定してくれる人がいないと話しあいは進展しません。自分にできることはもっとあると感じるようになりました。

「自分にできることはもっとあると感じるようになりました」文学部日本語日本文化学科3年のA・Nさん

S・Hさん(人間科学部 文化社会学科1年):私は人前で話すことに苦手意識がありましたが、説明会で先輩方がとてもわかりやすく授業の魅力を話すようすを見て、自分自身もリーダーシップの能力を伸ばしたいと思い受講しました。人の話を聞くこと、時間を計るといったサポート的な役割もチームでは大事な役割だと実感した1年間でした。

--皆さん自信をもてるようになったのですね。

佐伯教授:入学時には、自分に自信がもてない学生も少なくありません。そんな学生たちが、自分が無意識に発揮している「リーダーシップ」に気付き、自信を育むこと。それが、「新リーダーシップ」教育の出発点となります。この「気付き」のきっかけとなるのが、チームメンバーからのフィードバックです。自分では意識していなかった行動が、実はチームに良い影響を与えていた――。そのことを仲間のフィードバックから知ることで、学生は「自分はチームの役に立つことができる」と前向きな気持ちをもつようになります。

 そして、「次は発言してみよう」など、これまでためらってきた行動にも自然と挑戦できるようになります。授業では、このような前向きな変化を引き出すために、振り返りとフィードバックの仕組みを丁寧に設計しています。

「自分が無意識に発揮している『リーダーシップ』に気付き、自信を育むのが出発点」佐伯勇教授(人間科学部 文化社会学科 教授/副学長(リーダーシップ教育担当)/リーダーシップ教育センター長/教務部長)

森本教授: 1年生の前期はポジティブなフィードバックをしあうことを徹底し、小さな自信を積み重ねます。後期はお互いが一歩踏み込み、より建設的なフィードバックを伝えあうことで、相手の立場や状況を考慮しながら適切に対応する力が養われ、多様な場面で柔軟にリーダーシップを発揮できるようになります。

正解のない時代を生き抜くための、唯一無二のプログラム

--2025年4月より、「リーダーシップ教育センター」が設置され、全学部でリーダーシップ・プログラムを受講可能となりました。甲南女子大学の教育の柱として発展してきた背景を教えてください。

佐伯教授:正解のない時代を生き抜くためには、多様な意見を尊重しあいながら、協力して成果を達成する力が不可欠です。2015年頃から、全国の教育の取組みを調査した結果「ひとりひとりの持ち味を生かしてチームの目標達成に貢献する力を育成する」という「全員発揮型のリーダーシップ」教育が最適であると判断しました。そして、2017年に西日本の大学、そして全国の女子大学で初めて正課科目として導入しました。

 初年度は1クラス・受講生26名からスタートしましたが、「楽しく、成長できる」授業との評判が学生の間に広まり、2024年度には受講者数が300名を突破。授業の規模は急速に拡大しました。これまで高い成長実感や満足度を維持できている背景には、学習アシスタントを丁寧に育成してきたという工夫があります。学習アシスタントは、前年度にこの授業を受けた経験を生かし、受講生の気持ちに寄り添いながら、楽しくわかりやすく授業を進行。グループワークを円滑に進める手助けをすることで、受講生が自然にリーダーシップを発揮できるよう導きます。また、1学年上の先輩が授業を運営する姿は、受講生にとって身近なロールモデルとなり、「自分も挑戦できるかも」という前向きな気持ちを生み出しています。

 2025年度からは、医療系の2学部を含む全学部へと受講対象を拡大し、新入生の約93%がこの科目を履修登録。全学部の新入生が、学部を超えて編成されたクラスで1年間リーダーシップを学べるのは、全国でも甲南女子大学だけの特徴です。今後は、他の授業や課外活動などでも、メンバーや状況に応じたリーダーシップを発揮できる学生がますます増えていくことを期待しています。

森本教授:学生はひとりで勉強しがちですが、社会に出ると他者との交流が絶対に必要です。今日の体験授業に参加してくれた学生たちを見ていると、1年生のころから随分変わったことがわかります。

 S・Yさんは1年生のころ、ひとりで頑張るあまりに周囲を上手く巻き込めず、辛く感じている時期がありましたね。周りの学生に聞くと「やってくれるから任せていた」「言ってくれたら良かったのに」と返ってくる。そこで他者に任せることの大切さを知り、一段と成長できたのではないでしょうか。

S・Yさん:そう思います。周囲の力を借りられるようになって気持ちが楽になりましたし、目標を達成するにはチーム全員がそれぞれの強みを生かすことが重要だと学びました。

「社会に出ると他者との交流が絶対に必要」森本真理教授(国際学部 国際英語学科 教授/リーダーシップ教育センター 専任教員/キャリアセンター長・資格サポートセンター長)

--女子大学でのリーダーシップ教育は、どのような利点があるとお考えですか。

佐伯教授:男女共学の環境で、自分を自然に出せる人もいますが、そうでない人もいます。後者にとっては、女子大学という環境が、性別を意識せず自分を出しやすい場所になることがあります。まず、女性だけの環境で自分の個性と向き合い、自信を育む。そのうえで、学外で「自分らしいリーダーシップ」を発揮する実践的な機会に挑戦する。甲南女子大学の3段階のリーダーシップ・プログラムは、そのような構造になっています。「男性がいると自分を出しづらい」と感じる人にこそ、女子大学という環境でリーダーシップを学ぶ価値があると考えています。

「自分の器が広がった」多様な価値観を受容する力を育む

--リーダーシップ教育を通じてどのようなスキルが身に付いたと感じていますか。

S・Yさん:先頭に立って理想を掲げるだけではなく、他者のさまざまな意見を受け入れた上で新しい意見を出せるようになり、自分の器が広がったように思います。

「他者の意見を受け入れることで、自分の器が広がった」文学部日本語日本文化学科3年S・Yさん

A・Nさん:私は物事の本質を考えるための質問力が上がったと思います。ひとつの意見が出たときにそのまま進むのではなく、どこか深掘りすべき点はないか探すようになりました。また、論理的な思考力と計画性が身に付きましたし、家の中でも自分の役割を見つけられるようになり、家事を手伝うことも増えました。

S・Hさん:私は初対面の人と苦なく話せるようになりました。これまで苦手だったアルバイトの面接でも、授業で学んだ、話の聞き方のポイントや、効果的な話し方の順序を実践したところ、緊張せずに目上の人と話せるようになり、自分の成長を感じています。

 また、入学前は「こんなことを話して良いのかな」と相手に気を遣いすぎてしまうところがあったのですが、大学の授業で話す機会が増えて、素直に自分の気持ちを話しても意外と受け入れてもらえるものなんだと知りました。困ったときは家族にも素直に「アドバイスが欲しい」と言えるようになり、気持ちが楽になりました。

森本教授:今皆さんが話してくれたような「小さな自信」の積み重ねで自分らしさを肯定できるようになり、行動が変わります。すると周囲の反応、すなわちチームも変わっていきます。これこそが「新リーダーシップ」教育の真髄なのです。

「初対面の人と苦なく話せるようになりました」人間科学部 文化社会学科1年S・Hさん

「面接で困らない」自然と就活にも強くなる

--甲南女子大学は就職に強いイメージがあります。新リーダーシップ教育を受けた学生は、就職活動においてどのような強みを発揮していると感じますか。

森本教授:受講生のコミュニケーション力が格段に上がっている実感はあります。苦手な人が多いといわれるWeb集団面接でも、「困ったことがない」という声をよく聞くようになりました。社会では調整能力が求められる場面も多いですが、授業を通じて相手との関係性に配慮し、調整しながら受け答えできる力が自然と身に付くので、就活において大きな強みになっているでしょう。

佐伯教授:プロジェクトを通じて得られる他者からのフィードバックにより、自分の強みや弱みが理解できるので、自然と自己分析が進みます。また、自分と他者の特性やチームの状況を見極めながら、自分の関わり方を柔軟に調整することができるようになるので、集団討論や面接でも、良い意味で印象に残る存在になることができます。

--就活でも強みになるスキルが着実に身に付いていくのですね。最後に高校生とその保護者の方に向けてメッセージをお願いします。

学生生活は楽しいと笑顔で話してくれた

佐伯教授:甲南女子大学の「新リーダーシップ」教育では、自分の強みを理解できるようになります。その結果、自己肯定感が上がり、積極的に行動できるようになります。自分自身を成長させたいと思っている人には、その期待に応えられる大学です。

森本教授:甲南女子大学はワンキャンパスで教職員との距離も近く、アットホームな雰囲気で、安心してお子さんを任せていただける大学です。推しはやはり「新リーダーシップ」教育です。保護者世代が思うリーダーシップとは異なり、リーダーシップは誰にでもある、すでにもっているものです。センスやカリスマ性が絶対必要ということではなく、教育で培うことができます。学生ひとりひとりが自分らしいリーダーシップを身に付けられるよう、皆が本音の言える安心安全な空間を作り、社会で活躍できる人材を育てていきたいです。

S・Yさん:「学校が楽しい」という感覚は小学生ぐらいまでかと思っていたのですが、今も大学が本当に楽しくて、それが何よりも嬉しいです。ぜひオープンキャンパスを見に来てください。


 共に学びあい、自己肯定感を高め、自信をもって挑戦する。甲南女子大学の「新リーダーシップ」教育は、学生ひとりひとりが自分の強みを最大限に発揮し、社会に飛び出すための力強いバネとなるだろう。

甲南女子大学の新リーダーシップ教育
3分で分かる甲南女子大学

《土取真以子》

土取真以子

関西在住の編集・ライター。教育、子育て、ライフスタイル、お出かけのジャンルを中心に、インタビュー記事やイベントレポートなどの執筆を手がける。教育への関心が強く、自身の出産後に保育士資格を取得。趣味が旅行とハイキングで、目標は親子で四国お遍路&スペイン巡礼。

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