埼玉県新座市にある西武台高等学校は1981年に創立され、部活動と大学進学に向けて充実した学校生活を送ることができる、中学併設の私立高校だ。その西武台高校では今、次代を見据えて学校改革を進めているという。
今年4月に着任した佐賀博校長、入試広報部主任の加藤歩樹先生、進路指導部副主任・国際交流事務局の髙田大地先生、特系統括主任・総合施策部主任の河野芳人先生、同校の自習室を企画・運営する「まなびコーチング」の遠藤崇弘氏に、学校改革の実際や今後の展望、まなびコーチングの役割と効果などを聞いた。
新コース・探究強化・放課後改革で西武台は変わる
--西武台高校が現在進める学校改革の概要を教えてください。
佐賀先生:西武台高校は創立45年を迎え、この4月から私は校長に着任しました。今が次代を見据えて大きく変革する節目と考え、教職員全体で「アップデート」を合言葉に、何かを変えない限り後退になるという意識をもって取り組んでいます。
まずは新しいコースを編成し、名称を変更します。目的別の4コースを作ることで、2026年度(令和8年度)からは、3年前にできたSTEAMコースを合わせて計5コース編成となります。
カリキュラムの変更のほかに、「総合的な探究の時間」の全面的なリニューアルのほか、放課後の学習もリニューアルを考えており、動画授業を活用した自学自習と、教員による講習の組み合わせを検討しています。また、まなびコーチングさんによる自習室は生徒のニーズも高く、学ぶ場の雰囲気作りをこれからも大事にしたいと思います。
西武台高校はこれまでも行事や部活に熱心に取り組んできましたが、文化祭などの学校行事については、今後はより生徒が主体的に取り組めるように進化させていけたらと考えています。
さらに今年は入試も変えます。併願で受験する方を応援するため、前期試験は従来通りの3教科のマークシート方式で実施しますが、2月実施の後期試験については埼玉県の公立高校入試に沿った内容で5教科の記述式にし、受験結果をフィードバックし、より多様な選択肢を提供する予定です。

探究と学力向上から希望進路を実現
--2026年より新しい体制がはじまるとのことですが、どのように変わるのでしょうか。
加藤先生:新しいコース編成のねらいは、全校生徒1,500人が全員、第一志望の進路を実現することです。そのため土曜授業を全コースで導入し、授業時間を確保します。これは学力向上を図る目的のほか、「総合的な探究の時間」の強化も背景にあります。自分で問いを立てて学ぶためには、時間が必要とされるからです。
また、2年生進級時には文理選択がどのコースでも可能です。同じタイミングで、STEAMコース以外の4つのコースでは入学時のコースと別のコースを選ぶこともできます。高校に入学してさまざまなものに触れるうちに価値観が変わることもありますので、入学時のコースは固定せずに、再度コースを選択できるようにしています。

多様な進路に向けサポートが充実する新たなコース
--新しいコース編成について詳しく教えてください。
加藤先生:ナショナル・ユニコース(N-uni)は国公立大学の現役合格を目指します。国公立の入試は「情報」も入って科目数が多くなり、このコースのみ3年生まで土曜授業を継続します。また通常授業は6時間目までですが、放課後にあたる7時間目に演習を中心としたN-uni講習を必修として実施します。しっかりとした学力を高めるのがN-uniの一番のねらいです。
エンパワー・ユニコース(E-uni)は早慶上理やGMARCHといった難関私大を目指します。このコースは2年生まで土曜授業を実施しますが、私大は科目数が絞れるので3年生では土曜授業はなく、自学自習や自分が目指す専門性に時間を使います。またN-uni講習への参加も推奨します。国公立と難関私立はコースがわかれていますが、学力帯は大きく変わらないので、お互いを高め合えればと考えています。
中堅私大を目指すセレクト・ユニコース(S-uni)も土曜授業は2年生までになります。授業のペースはやや緩やかで、基礎を固めて着実な成長を狙います。S-uniでは、目標を立てて学習し、到達度をチェックしたうえで俯瞰し、自分に必要な学びを進めるという「自走」ができるよう、教員がきめ細かなサポートをします。また、放課後の講習にも参加可能で、より高みを目指すこともできます。
アスリート・ユニコース(A-uni)は、本校のサッカーや野球、陸上の投てき、女子新体操、男子バレーボールを対象に文武両道を目指すコースです。アスリートは遠征が多く勉強との両立が難しい面があるので、授業の録画をオンデマンドで配信、さまざまな学習アプリで学びを継続し、Classroomで学習状況を管理します。また「アスリート探究」という科目では栄養学やスポーツ科学、プロとして活躍するOG・OBを招いての講演も開催予定です。進路はプロアスリートを目指すのみならず、スポーツ推薦による大学進学や、勉強による一般入試やスポーツで鍛えた人間力を生かした総合型選抜など、アスリートだからこその進路をサポートします。

STEAMコースは3年目で今年初めて卒業生を出します。定期考査はなく到達度テストを繰り返して学力を定着させながら、自分の好きなものを突き詰めるコースです。本物に触れることを大事にし、STEAM(Science=科学、Technology=技術、Engineering=工学、Art=芸術、Mathematics=数学)という理系的手法で探究を進めます。「STEAM探究ツアー」では沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究のようすを見学したり、生徒自らが考えた世界にひとつだけの修学旅行では五島列島で過疎化の現実や海洋問題も学びました。このコースの生徒は国公立大学での総合型選抜での受験が多くなる予定です。
面倒見の良さで生徒を伸ばす
--伸びる生徒さんにはどのような共通点がありますか。
髙田先生:学校が提供するものにしっかりとついてきてくれる生徒です。さまざまな機会を幅広く提供できるのが私立高校の良さですので、積極的に機会をつかんでほしいですね。

河野先生:私は人懐っこい生徒が伸びるという印象があります。本校は、カリキュラムによってシステマチックに学力を引き上げ、さらに生徒が先生をうまく頼り、先生も親身に接する。そうした関係性によって、生徒の成長につながっているように思います。
髙田先生:本校は面倒見の良い先生が多いです。私は今、比較的学力の高いコースの生徒たちのクラスを担当していますが、教員のサポートでポテンシャルを発揮し、入学時の学力よりも、さらに高いレベルの大学へ合格するケースを数多く見てきました。これこそが西武台高校の強みだと感じます。
加藤先生:勉強するだけならば、オンラインでも良いと思うのです。しかし、「学校」という場にあえて来ることで、友達や先生との対話を通じ、さまざまな価値観に触れる中で、自分の目標を見つけたいと考える子たちに来ていただきたいですね。
「コーチング」で生徒のまなびをサポート
--まなびコーチングが運営する自習室は、西武台高校においてどのような場所なのかをお聞かせください。
遠藤氏:まなびコーチングによる西武台高校での自習室の運営は、今年で5年目になります。私たちからは教室長と現役大学生のコーチを派遣し、放課後の自習室の企画・運営を担っています。
この自習室は、生徒の来室の目的によって学習環境を分けています。黙々と集中できる個別ブース「スタディポット」、生徒とコーチまたは生徒同士で相談ができる「西武台ラーニングサポートセンター」、資料や書籍が充実している「図書室」の3つに区別されています。
私たちまなびコーチングの強みは、その名にある通り「コーチング」です。生徒様を自立的な学習者とするために、問いかけを起点として自分で考える姿勢を育みます。また、学習状況や理解度がさまざまな生徒様ひとりひとりに合わせ、単に勉強を教えるのではなく、たとえば「○○大学に進学したいけれど、どのように取り組めば良いのか」といった目標に向けての質問への対応や、目標達成に向けての具体的な学習方法の相談を実施しています。
こうした質問を受けた際に私たちが注意しているのは、その生徒が本当に達成したいと思う自分自身の目標を設定するということです。現状からは高い目標に思えても、本当に達成したいと思える目標であればそのために何が必要かを主体的に考えていくことができ るようになります。また大目標・中目標・小目標といった、スモールステップを意識することで、生徒が日々モチベーションを感じながら達成に積極的になれるようコミュニケーションをとっています。 またこのコーチングを生かして、先生方と連携を取りながら英検や学内模試の対策、定期試験に向けた個別コーチング面談なども企画・実施し、生徒様の目的に合わせて充実した放課後学習となるよう取り組んでおります。
このように、日々の学習計画の作成の段階から生徒に伴走することで、ひとりひとりの学習の悩みを解決に導いています。

生徒・先生双方に頼もしい存在
--先生方は自習室の効果をどのようにお感じでしょうか。
髙田先生:本校では部活終了後20時まで自習室が開いていますが、これは「文武両道」を支える大切な制度だと思います。部活が終わるとどうしても疲れますので、家に帰ると寝てしまうこともあると思います。しかし、こうした自習室が部活後に利用できる環境にあれば、集中して学習に取り組むことができ、とても助かりますね。
また、まなびコーチングさんと連携して、特進系のコースでは、定期考査の目標設定や振り返りのコーチング面談を全員にしていただいています。また、希望をすれば、他のコースでもこうした面談を受けることができます。
高校受験までは、塾に通って勉強し、言われた課題をやって学力を伸ばしてきたという生徒さんも多いと思います。ただ、大学受験を考えた場合、受け身の勉強では一定の偏差値までしか到達できません。目標とする大学や、自分の現状を踏まえて、何をすべきかを考えて取り組める姿勢を1年生のうちから育てています。これが出来るようになった生徒は、2年・3年と大きく成績を伸ばしていると実感しています。
そう考えると、まなびコーチングさんによる自習室が学校にあるのは、生徒の学力を伸ばす仕組みとしてもとても有効だと思います。教員が同じように生徒に伴走しようとすると、どうしても時間が足りません。ですので、まなびコーチングさんの存在は、教員の業務負担の軽減という面でも役立っているのです。
河野先生:まず学びの場の選択肢が増えるのが良いですよね。思春期ということもあって、「先生」と聞くだけで距離をとりたがる生徒もいます。そうした生徒にとって、年齢の近い大学生など先生とは違う立場の人に頼れる選択肢が増え、またコーチングが受けられるのは、生徒たちにとっての新たな居場所としてとても良いと思っています。

卒業生コーチの存在も心強い
--自習室についての生徒からの反響はいかがですか。
遠藤氏:自習室を利用した際のアンケートでは、「集中して勉強したい」「友達と教え合いながら勉強したい」「スクールバスの待ち時間など隙間時間で利用したい」など、用途に合わせて利用できる点が好評でした。また、大学生コーチについては「数年前に受験を経験しているので最新の受験方式や実際の詳しい部分を聞ける」「教え方も親切でわかりやすい」とのこと。特に今年からは13名のうち5名が西武台高校の卒業生です。「コーチ自身が西武台での経験をもとに自分の現状を汲み取ってくれるので話しやすい」といった声もあがっています。
今後はコースも目的別になりますが、目標をいかに実現できるかが大事だと思います。個別にコーチングでアプローチしながら実行に結びつけたいと思います。

自信や自己決定力を獲得する3年間
--3年間の西武台高校の生活で何を身に付けてほしいとお考えですか。
佐賀先生:目的別のコースで切磋琢磨しながら、行事や部活なども通じて、自分で調べ、自分で考えて実行でき、最終的には社会に貢献できる力を身に付けてほしいと思います。その観点からも「総合的な探究の時間」は重要ですし、そのベースとなる学力もしっかりと身に付けてほしいですね。
高田先生:私は何かひとつ自信を付けて卒業してほしいと思っています。自分の所属するコースの中だけでなく、さまざまな人と関わり合いながら、自分だけのきらりと光るものを見つけてほしい。私たち教員は、それを伸ばして、目標の実現に向けて精一杯サポートをしていきたいですね。
河野先生:入試の個別相談では、具体的な進路目標がまだ決まっておらず、何となく志望するというお子さんもいらっしゃると思います。まずは西武台高校で「こういうことをやりたい」と思えるようなものを見つけてほしいです。
加藤先生:仮に最初の目標と違っても、学校生活を送る中で、新しい目標=夢を見つけることができると思います。来年からの新しい5つのコースも、そうした生徒の皆さんの夢を実現するためのものなので、私たち教員も、ひとりひとりが納得できる選択が可能になるよう、しっかりと後押しをしていきたいと考えています。
河野先生:どのコースで学ぶにしても、自分で何かを決める力と自分で立てた目標に対して行動する力を必ず身に付けてほしいと思います。自分で決めるからこそ、そこに向かって自走していく力が強くなるものだからです。
--そのような「自走」をサポートしてくれる存在のひとつが、まなびコーチングの自習室ということですね?
河野先生:はい。まなびコーチングさんの方も支えてくれるおかげで、生徒たちがやる気になり、生徒たちはモチベーションを維持し向上することができる。そして常に私たち教員とも連携をとってくれるおかげで、生徒の状況を把握することができる。本当にとても頼もしい存在だなと思います。

新たな学校を共に創る
--これから西武台高校の受験を考える子供たちにメッセージをお願いします。
佐賀先生:西武台高校はこれから変わります。これから入学する子供たちには、その変革の実践者に、同時にこんなふうに変わったという証人になってほしい。そして自分たちが変えたのだと誇りをもってほしいと願っています。是非一緒に新たな学校を創っていきましょう。
--本日はありがとうございました。

取材時には夏休み期間中にもかかわらず、生徒と先生が校内の各所で明るく会話しているようすが見られたのがとても印象的だった。こうした校風はそのままに、生徒の進路実現に向けて学校改革を進める西武台高校に今後の期待は高まる。
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